【Vlog】配信中にマイクを切り忘れた妹に巻きこまれてVTuberをやることになった僕は、彼女を人気配信者に仕立てあげることにした
【ちゃんと勉強してんの!?】第1回 Vtuber抜き打ち学力診断テスト!
#9
【ちゃんと勉強してんの!?】第1回 Vtuber抜き打ち学力診断テスト!
おにい:ストーカー、質問なんだけど。高校の中間試験っていつから?
しーし:まさかまた連絡が来るとは
僕は繰等のDMにまた連絡をしていた。
決して出会い厨と化したわけではない。不用意な個人的なDMで面倒なことになるのは、なにを隠すまでもなく、DMの送り主である繰等なのだから。
僕が『おにい』として活動を始める以前、『ハレとケ』として活動していた頃から僕を知っている古参の視聴者にして、祢巻のクラスメイトで友達。あるいは僕のストーカーである。
僕が昔やった相談配信で救われたと感じた彼女は、僕を盲信するようになり、最終的に僕が通っていた高校に通うまで果たしてしまった。
祢巻とクラスメイトになったのも友達になったのも偶然らしいのだが、それがある意味、僕との運命を感じさせている気もする。
おにい:祢巻の友達で連絡先を知っているのはお前しかいないからな
しーし:妹の友達の連絡先を知っている方が変ですって
それもそうか。
しーし:それで、どうして中間試験の日程が知りたいんです? まさか動画のネタにするとか
しーし:いやあ、ハレさんとはいえさすがにそんな個人情報を流出させるようなことを……
おにい:うん。するんだけど
しーし:するの!?
めちゃくちゃ驚かれた。
いや、するだろ。VTuberは自分を切り売りする職業だぞ。
おにい:動画にするって言っても、祢巻の中間試験のデータを公開するとかそういうわけじゃあないからな
おにい:中間試験の範囲を再試験するだけだ
しーし:かわいそ……
しーし:でも、それなら祢巻に聞いた方が早いんじゃあないですか?
繰等は当然ともいえる疑問をぶつけてきた。
祢巻の試験期間を知りたいのなら、祢巻本人に聞いた方が早いじゃあないか。
おにい:それはそうだし、なんなら自分が学生だった頃を思いだしたら、これぐらいの時期に試験があったよな。とかも分かるんだけどさ
おにい:というか、そろそろ試験期間になると思うんだけど
おにい:祢巻が勉強してる様子がないんだよ
しーし:あ、あー……
最近の祢巻は基本的にリビングのソファの上で寝っ転がってばかりいる。
足をパタパタとぱたつかせながら、スマホでYouTubeを見ている毎日だ。
「祢巻、ちゃんと勉強してるのか?」
僕がさながら母親のように尋ねてみると祢巻は。
「んー?」
スマホから目を離さずに、なにも考えてなさそうな声をあげて。
「勉強してるよ、してる」
と、気楽そうに答えるのだった。
まあ祢巻がそういうのであれば、僕は信用するしかないのだが、しかし、祢巻が遊んでいる時しか見ないような気がするのである。
しーし:自分の部屋で勉強しているんじゃあ?
しーし:ほら、親は子供が部屋でなにをしているか知らないから、遊んでばかりいるように見えるみたいな、そんな話あるじゃないっすか
おにい:今から勉強するつもりだったのに。みたいな?
しーし:そうそう
しーし:さすがに毎分毎秒勉強しているわけじゃないですし、部屋の外では休んでるんですって
だったらいいんだけど……。
普通にサボっている可能性だって否定できない。
僕は祢巻には高校生活の方を優先してほしいと思っている。
一度しかない高校生活をVTuber活動なんかで潰してほしくない。
あと普通に勉強しないと、将来僕みたいな引きこもりになってしまうかもしれない。
小説家デビューしても仕事を辞めないでください。
VTuberになっても学校はサボらず行ってください。
おにい:だからストーカーでクラスメイトのお前に祢巻の監視をお願いしたいんだ。ちゃんと勉強しているか。お願いできるか?
しーし:そういうことなら……と言いたいところではありますけど、私はハレさんのストーカーであると同時に、祢巻の親友と言っても過言ではないお友達なんですよ
しーし:祢巻のプライベートを守りたいと、私の心は叫んでいるんです!
おにい:ハレとケ時代に企画でつくった『大岩くんフィギュア(実況で遊んだゲームに登場するキャラ。1個しかつくってない)』あげるよ
しーし:祢巻の個人情報なんていくらでも売りますよ!!
***
ということで祢巻の情報をハレさんに売りつけることになったのが、この私、椎石である。
ごめんね、祢巻。でも友達より大事なものってあるんだ。例えば推しの手作りフィギュアとか……。
さて、どうやって祢巻から情報を引き出そうか。
ハレさんと連絡を取った次の日、私は学校への通学路で腕を組みながら考えていた。
ハレさんは多分、祢巻が勉強しているかどうか、しっかりとした証拠が欲しいと欲しいのだと思う。
勉強しているのか、それとも、してないのか。
していたらそれはそれで問題はないし、してなかったらちゃんと祢巻は怒られることになるだろう。
まあ、とりあえずいつもみたいに写真を撮ったりすればいいのかな。ハレさんがわざわざ私に依頼したのって、つまり、ストーカーであることを買われたってことだと思うし、こそこそと……。
「おっはよー、繰等ちゃん!」
「ひうっ!」
考え事をしている最中に、急に背中を叩かれた私は、自分でもビックリするぐらい高い声をあげた。
「びっくりしたあ。ごめん、力強かった?」
振り返ってみると、祢巻が両手を合わせて謝っていた。
「め、珍しいね。通学路一緒だったっけ?」
胸をおさえながら、私は尋ねる。
確か私の部屋と花巣家は離れた場所にあって、通学路がぶつかることなんてあんまりなかったような気がするんだけど。
「あれ、そうだったっけ?」
祢巻は少しとぼけるように首を傾げてみせた。
「朝はやく起きて散歩してたからかな、確かにいつもと違う道だったかも!」
いひひ。と笑う祢巻。
……怪しい。チート疑惑がかかったとき、そんなことありませんよと手元動画をあげながら、自分の最強クリップをあげてくるFPSプレイヤーぐらい怪しい。
祢巻は早起きしたというけれども、その目はむしろあまり寝ていないようにも見えた。
早起きではなく、寝ていないといった方が信用できるというか。
……朝帰り?
「そんなことより、はやく学校に行こうよ。学校遅刻しちゃったらおにいに怒られるんだ」
「お兄さんって結構過保護だったりする?」
「過保護も過保護だよ。小学校の頃、私にハサミを使わせてくれなかったんだよ?」
本当に過保護だった。さすがにそれはどうかと思いますよ、ハレさん。
しかし、話を急に遮るあたり、なにか後ろめたいものでもあるのではないだろうか。
怪しい……。
「私としては、お兄さんに怒られている祢巻が見たいような気もするし、今から海に行かない?」
「完全に学校サボる気じゃん! 試験期間中なんだよ私たち!?」
「将来のことなんて将来考えればいいんだよ」
「そんなことしてたらおにいみたいなニートになっちゃうよ」
「お兄さんが泣いてるよ?」
そう、泣いてしまうかもしれない。
ハレさんには祢巻が勉強しているかどうかの確認をしてほしい。という依頼を受けたけれども、もしかしたら、祢巻の不良行動が発覚してしまうかもしれません。
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