【ガチ】身バレしましたwwwww【おにい】
折り紙早折り勝負は祢巻の圧勝で終わった。
祢巻が勝った場合、ご褒美をあげるという約束になっていたので、褒美はなにがいいかと尋ねてみたところ。
「ご褒美は買い物が良い!」
ということで、ウインドウショッピングをすることになった。
果たして今時の子はウインドウショッピングというのだろうか。
今時の子の動向が気になる時点で、もう老いが来ているのではないかという話はしないでおこう。
しかし、二人っきりで買い物なんて久々だな。デートVlogでも撮って視聴者に自慢してやろうか。あいつら、僕のことを折り鶴も折れないのかとずっと煽ってきてたからな。僕が煽り返したってなにも問題はないだろう。
なんて思っていたのだが、いざ祢巻が指定したアウトレットモールに向かってみると、見知らぬ女の子が待ち構えていた。
いわゆるプリン頭の女の子。
年齢は恐らく、祢巻と同じぐらいだろう。
派手めな化粧に赤色で統一された衣装に身を包んでいる。
つまるところ、ギャルというやつだろうか。
「おにい、紹介するね。クラスメイトの
「はじめまして、祢巻のクラスメイトやらせてもらってます!」
ニコニコと笑いながら、びしっと敬礼をする繰等。
「
「よ、よろしく……」
目から星をださんばかりに強くウインクをする繰等。明るい子だなあ。
「初めまして。僕は」
「お兄さんですよね。祢巻の。
「あれ、どこかで話したことあったっけ?」
「学校で毎日のように祢巻が話してるので。おにいがおにいがって」
「繰等ちゃん。それは言わない話だって」
祢巻は慌てて繰等の口を塞いだ。
ふうん、学校で僕の話を毎日のように、ねえ……。
僕は繰等に近づくと、祢巻に聞こえないように小さな声で尋ねる。
「ちなみにどんな話をしてるの?」
「傷つかない範囲でよければ話しますけど……」
「そんな恐い前置きある?」
「……………………」
「なんで無言なんだ?」
「……………………」
「傷つく範囲しか話してないってこと?」
「……………………」
「にんまり笑わないで」
学校での祢巻の様子が気になって仕方なくなってきた。
どうにか、動画の企画とかで覗きこんだりできないだろうか。
考えこむ僕に、繰等はすすす。と近づいてくると、それが当たり前だと言わんばかりに、僕の腕を取った。
自分の体に引き寄せるように腕を組み、もう片方の手ではスマホを持っている。
彼女の胸は、祢巻よりも成長していた。つまり、密着しているということは、ぴったりと当たっているということである。
スマホは画面の方が僕らの方を向いていた。
画面には僕と繰等の姿が映っている。自撮りモードのカメラが起動しているらしい。
「写真を撮ってくれたらちゃんと教えてあげますよ。ピースピース!」
「ぴ、ぴーす」
勢いにおされて、僕もカメラに向かってポーズを撮る。
シャッターを切る音。
ところで、今どきの子ってシャッターを切るって言うのかしら。スマホで写真を撮るとき、シャッターなんてないからな。
繰等は画面を覗きながら、満足げにむふーと鼻を鳴らすと、すぐに僕から離れた。
「祢巻に怒られたくないから逃げるー!」
「別に怒らないよな、祢巻」
「うん、別に」
「お兄さんのことを信頼しきってるセリフだ……」
祢巻の方を見てみると、彼女は特になにも思ってないと言わんばかりに、頷いていた。
繰等はぺこりと頭を下げる。
「写真、ありがとうございます。大事にしますね!」
「いや、別にいいんだけど……」
僕は頬をかきながら尋ねる。
「いつもこういう風に写真を撮ってるの?」
「はいっ!」
繰等は満面の笑みで答えると、スマホの画面を僕に突きつけてきた。
写真を何枚も勢いよくスクロールしていく。
小さな女の子から身長の低いサングラスの男まで。
多種多様の人と、繰等はツーショットを撮っていた。
「こうやって写真を撮ると、一気に距離が縮まる気がするというか、仲良くなれる気がするので。初めて会う人とは写真を撮っているんです」
「私も繰等ちゃんと初めて会ったとき、写真をいっぱい撮られたよ」
祢巻はちょっと疲れた笑みを浮かべる。ツーショット写真だけでは済まなかったのかもしれない。
「祢巻は写真の撮りがいがあったからねー」
繰等は祢巻に近づくと、また写真を撮った。
なんだか変な子と友達なんだな、祢巻は。
ふうむ、しかし繰等が見せてくれたあの写真。なんかどっかで見たことがある気がするんだよな。
人のプライベート写真なんだから、見覚えがあるのがおかしな話ではあるんだけど。相手が芸能人だったりするのだろうか。
「ところで」
僕は一旦、話を変える。
「どうして繰等はここに?」
「折り紙早折り勝負のお師匠だからだよ」
祢巻はむん。と胸を張った。どうしてお前がそんな自信満々なんだ。
「折り鶴の折り方のコツを教えてもらったんだ」
「広島県人のマル秘テクニックです!」
繰等は横ピースをした。
「まあ、そんなコツが必要なほどの勝負じゃあなかったんだけど……おにいがヘタすぎて」
やれやれ。と手を横にして、頭を振る祢巻。
「でも勝ちは勝ちだし、ご褒美のお買い物だから、お師匠してもらったお礼で呼んだの。ダメだった?」
「いや別に。祢巻の友達っていうなら、大歓迎だよ」
「やったー! お兄さん太っ腹ー!!」
「あれ、僕ふたり分奢ることになってる?」
まあしょうがないか。ここで祢巻だけって言うのも、なんだかケチくさいっていうか、悪い気がするし。
「それにしても」
繰等は不思議そうに小首を傾げながら、唇に指を添える。
「どうしてふたりは折り紙の早折り勝負なんてしてたんですか?」
僕は祢巻の方を見る。
自分がVTuberだってこと、この子に伝えてる? という目を向ける。
氷上坂さん直伝、アイコンタクト会話術である。まだ未熟なので、祢巻としか使えない。
祢巻は
そんなの言うわけないじゃん! VTuberは顔バレ身バレ厳禁だよ。
今時はそうでもないんじゃない? なんて一瞬思ったけど、まあ顔出しする配信者が少ないのは今も昔も変わらないか。
ん……?
配信者……?
「祢巻が服を買ってほしいってねだってきたから、じゃあ勝負で勝ったらいいよってことでね」
「それで、早折り勝負ですか?」
「どうせ勝負するなら、どっちもやったことがないことで勝負した方がフェアだし楽しいからさ」
「仲が良いんですね」
ふふふ。と、繰等は笑う。
「じゃ、早速買い物にでかけるか。祢巻はどこか行きたい店はあるのか?」
「こっち!」
祢巻は満面の笑みで、店に向かって歩きだす。
僕と繰等も、顔を見合わせてから祢巻の後を追いかけるように歩く。
「さっきの写真だけどさ」
そこで。僕は祢巻に聞こえないような小さな声で、繰等に尋ねた。
「写真ですか?」
「なんか見覚えあるなーって見たときから思ってたんだけど……あれ、配信者とのツーショットばかりじゃなかった?」
繰等は歩きながら僕の方を見る。にまあ。と粘着質な笑みを浮かべていた。
「はい、その通りです。ハレとケさん。今は『おにい』でしたっけ?」
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