第7話
それはこの世界において、酒という飲み物が神の手と英智を借りず、人類種が自らの手で手に入れた醸造技術によって獲得した経緯に由来する。そのため
神魔大戦以降、神々の現世への干渉は激減したが、完全に繋がりが失われた訳では無い。神魔大戦中に土地や神器に施された加護や祝福は未だ健在であり、信仰あつき善き神の使徒には今も尚、誓約による祝福と加護が稀に与えられることがある。
しかし
善き神と、全ての神と世界を作った名も無き神、
その力と、造酒と酒宴による人々の酒に対する思いはやがて人の身にありながら神の力を宿し、死すればまたその権能を持つ者として、いつの間にか、どこからか現れるようになる。
そしてその代の
外れた左肩をおさえ片膝を着いたまま、
「あ、あなたは……」
(彼は何者?
視線の先では先程まで莫大なマナを凝集させ、絶望の一撃を放った
「
その聖剣から放たれた沈みゆく太陽を鋳溶かしたような黄金の光は、限りなく細い斬撃となって地平線まで走り、放たれた光弾ごと
聖剣は、太陽が稜線へと沈みきったのと同時に訪れた夜に溶けるように掻き消えていく。
「
「ん?ああ、はい。私の名はロゥグンと申します。」
「あなた、今年で幾つ冬至を超えたの?」
「んー……。たしか37、でしたかね。」
「それほどの力がありながら、あなたの名は神魔大戦の英雄として聞いたことがない。最前線で生まれ育った私でさえ。あなた、一体何者?」
外れた左肩を戻し、立ち上がったユゥルティアは、生まれた疑問を確認するように質問し、短く生えた顎の無精髭をさすりながら現人神の男は答えた。
「帰って体を温めますか。なに、私は酒と宴の神。取っておきで祝杯を上げましょう!」
暗くなった夜道を火を掲げ、騎士団は帰路に着いた。無傷のものはいなかったが、歩けぬものも居なかった。騎士たちは致命の一撃を身を呈して防いだ女領主の力量に心酔し、それを上回る絶望を斬り払った
また、フリエリに付けば噂に聞く
夜が更け、雪雲の隙間から洩れる月明かりが頭の上に差し掛かった頃。篝火を焚き、門を閉ざし、胸壁の櫓の上で夜警をしていた老いた
「おーーい!皆、領主様と騎士団が帰られたぞ!!凱旋じゃ!!」
器魂刻路〜存在抹消された勇者、酒の神として世界を放浪する 黒鵜 樫洲 @96U_Cassis
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