第6話
太陽が西に傾き、騎士たちの横顔を赤く照らす中、
「
「「「「応!!!!」」」」
人類最果て、かつての魔王領との最前線で研鑽を積んだ騎士たちの士気は高く、対して司令塔の居ない
中でも一際目立つのは、女辺境伯であるユゥルティアだ。
ユゥルティアは自らの
雪の積もった最果ての地に、氷と剣技によって多くの敵を屠る自らの主の美しさを目にした騎士たちは更に士気を上げることになった。
また、ロゥグンに突撃しようとしていた
一方的な展開に誰もが騎士団たちの勝利を確信し、とある騎士が山の稜線に沈もうとする太陽を一瞥したその時、矢の届かない距離でギョロギョロと瞳を動かしながら、棘だらけの触手で地面を這いずり、せわしなく牙の生えた瞼を瞬きさせていただけの
「ギャアアアアアアア!!!」
突如絶叫を上げた
唐突な大将首の豹変に騎士たちの動きが一瞬止まったその隙を着いて、騎士たちと交戦していた
そして
「間に合えっ!
いち早く動いたのはユゥルティアだった。彼女は氷の足場を使い空中へと飛び上がると、自らの盾に大量のマナを集め、巨大な氷の華の盾を展開した。
黄昏を昼間のように塗り替える光を放つ膨大なマナによる暴力は、容赦なく空中に爆発を起こした。
「閣下!」
「ああ、そんな!」
目の前で一騎当千の戦いをした女領主がその爆発に呑み込まれる様をみた騎士たちは、絶望の表情で膝から崩れ落ちる者もいた。
「あっぶないわね……、死ぬかと思った。」
光に塗りつぶされたかに見えたユゥルティアは、砕け散る氷の結晶と共にそう呟きながら爆炎から飛び出すと、美しい白い毛並みを煤で汚しながら地上に落ち、器用に空中で体勢を整えて音もなく着地して膝をつき、剣を杖として突き立てた。
「閣下!!よくぞご無事で!!本当に良かった…!!申し訳ありませぬ、我々がありながら…。」
「いいえ、あれは私しか防げませんでした。これが最善です。」
絶望の表情で崩れ落ちていた配下の騎士たちは再び瞳の輝きを取り戻して駆け寄ったが、ユゥルティアは先程の
そして安堵したのも束の間、
「あのデカブツ、自分の仲間を殺し始めたぞ?」
「何がしたいんだ?あいつがさっき撃った攻撃をもう一度されれば、俺達は今度こそ無事じゃ済まないぞ!なにかされる前にあいつを叩こう!」
自ら同士討ちのようなものを始めた
「閣下、ご無事ですか?」
「うん、家宝の盾と器魂術のおかげでなんとかね……。でも、次の攻撃は防げそうもないかな。今のところ大勢の仲間を自分ですり潰してるから助かっているけれど。」
「貴様!あれほどの力がありながら、なぜ辺境伯閣下をお助けしなかったのだ!」
突如、ユゥルティアの介抱をしていた若い騎士の1人が、黒い毛並みを逆立てながらロゥグンに掴みかからんばかりの勢いで詰め寄った。
「あの程度であれば、多少のダメージはあったとしても、閣下の力量であれば防げると判断しただけだ。」
「しかし!!」
「よしなさい、イサド。」
しかし詰め寄った若い騎士は、心酔するユゥルティアに諌められ、すぐに矛を引くことになった。
「……申し訳ありません、閣下。」
「話を戻しましょう。……閣下、あれは
「ギチチチチギャアアアアアアアアッッ!!!」
突如、
その中からは、口に巨大なマナ輝石を咥え、顔の上半分と両腕の無い、白く巨大な女の上半身が現れた。
「なに?……あのマナの量と姿。」
もはや先程までのおぞましい外見からうってかわり、いっそ神々しさまでも感じる程内包したマナをもって、夜の帳の降りつつある最果ての地に死の光をもたらす為、巨大な暗い紫色のマナ輝石が輝き始めた。
「……我は■■、ロゥグン。不浄なる呪いを断ち、人の世を守り、
唖然としたユゥルティアたちをよそにロゥグンはそう呟くと、ひたすらに集めていたマナ輝石を融合させて作った大剣を手に、死の光を
ロゥグンが膨大な量のマナ輝石を融合させた、その赤黒い剣の柄を握りしめ、右手に黄金のマナを流し込むと、マナ輝石によって作られた刀身が再び液体のようにぐずと崩れ、別の形に姿を変えていく。
細身の両刃剣の様でありながら、しかし半ばから折れたようにその先の無い、剣としては使えそうもないそれを、ロゥグンは左肩に右手を寄せるように引き絞る。
一欠片を残して西の空に沈みゆく太陽の残した光が折れた剣へと降り注ぎ、刀身が形作られていく。根元から緋色、紫紺、そして白へと色を変え、金の縁どりと黄金の文字が刻まれた美しい一振りの剣がロゥグンの右手に現れた。
「……キレイ。」
「マナ、臨界収束。魔導錬成完了、
世界が、弾けた。
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