ヤミノミコン

@sasukesankakee2023

第1話 ヤミノミコンのページを開け



「面倒くさい……」


そんなセリフを吐く、俺の机の前に椅子を置いて座り、ダラダラ話しかけてくるコイツは俺の友人、大江山茂成だ。


「面倒くさいだと?何を言っている。コレはお前の将来に関わる問題だ。しっかり考えてしっかり決めろ」


そう言ってそいつの前に進路希望の紙を置いた俺の名前は、織田影斗。


俺達は高校生なりたての馬鹿2人。


この東京の街で、これから起こる最悪のバカ騒ぎに自ら首を突っ込みに行ってしまう、無謀な2人だ。



「進路進路って、まだ高校1年なりたての俺らにんなこと聞く必要あんのかよ……」


「まぁ、そう言うな。進路を決めておけば、これから理文で分かれる時にも迷わなくて済むぞ」


「俺が理系以外だと思うのか、テメェは」


「……ハッ。いや、思わないな」


「だったらそれは進路を聞かれる理由にはならねぇ。俺の場合はな」


「だから面倒くせえんだ。……意味のない事をやる事ほど無駄な事はない」


「またそれか」


「悪いかよ」


「いや」



「……ま、良いさ。今決める事じゃないのは確かだしな。気長に考えろ」


「……ああ」



「それよりお前、この後予定入ってただろ。早く行けよ、文芸部」


「……今日は断った。元々俺はいないも同然だし行かなくても良いだろうと思ってな。それより影斗、今日は別の用事がある。ついてこい」


「……ふん。お前が文芸部の活動を蹴るとはな」


「……どういう意味だ」


「そのままさ。お前、あの文芸部のヒメサマが好きだろう?好きな人の頼みは、昔から断らんからな」


「昔とは違うだろ。……それは否定しねーけど、今はもっと重要な事があるんだ」


「……ああ、なるほど。別の用事というのは、"アレ"か」


「そう、"アレ"だ」



俺と茂成は席を立ち、荷物をまとめて、教室を出た。廊下を歩き、階段を降りて、校舎を出て、校門を出る。


そしてそのままの姿で、いつもの通学路とは違うルートを通り、駅へ向かう。


「吉祥寺駅」と書かれた看板が下げられたその駅に着き、そこから電車を乗り継いで「田町駅」へ向かう。


スマホで探りながらの移動だったため時間は掛かったが、用事をこなすためには必要な事だった。


「田町駅」につき、外に出ると、スーツ姿の男がこちらに声をかけてきた。



「よぉ、2人とも」


「……久しぶりだな、銀介。中学以来か」


「そうだな、卒業から随分経ったが、お前らどうだ、学校は」


「俺も茂成もそれなりに頑張ってるよ」


「そうか。俺の方も、まぁまぁ上手くいってるよ。こっちは特別学校だから普通の高校とはちっと違うがな」





「ま、そういう話はここら辺で終わっておこう。取り敢えず、埠頭に行くぞ」


「おう。いくぞ、茂成」


「……ああ」



俺達は田町駅から歩いて、芝浦埠頭という場所へ向かった。少し距離があるが、俺達は結構運動が出来る方なのでそこまで苦にはならない。


俺達は埠頭の端っこの運河側の所まで歩いてきたところで止まった。


「……おい、なんでわざわざ田町駅から歩いてここまでくる必要がある。芝浦埠頭には駅があっただろ」


「まあそう言うな茂成。歩く距離が遠かろうと近かろうと俺達には関係ない。むしろ良い運動になるじゃないか」


「だが、時間はかかるぞ。現に本来ここに"ヤツ"が現れるっつってた時間から、7分過ぎてる。もういなくなってるかもしれねえんだぞ」


「……茂成、影斗。そうでもないようだぞ」


銀介がそう言って指差した方向に俺と茂成が目線を向ける。するとそこには茂成が"ヤツ"と呼んでいる黒い塊の化け物が浮いていた。


運河の水の上に浮かぶソイツが、俺達の標的だ。



「……アレがそうか」


「ああ。今回の"裂魔"はアイツだ」


裂魔というのが、その黒い塊の名前。

人間を殺すために存在する悪意の塊で、

あるカードゲームのカードを用いて人間を殺す。


対処法は、そのカードゲームで裂魔に勝つ事。

そうすれば、裂魔は自信を無くして消滅するのだ。




「……ふむ、今回のは大した事なさそうだな。誰が行く?」




「俺にやらせろ。今日は色々溜まってるもんを吐き出したい」


茂成が前に出た。

俺達は後ろに下がり、茂成を見守る。


いつになく茂成はイライラしているようで、俺達が下がるなり、懐から或る本を取り出し、声を上げる。


「"ヤミノミコン、扉を開け!

       新たな殺し合いの始まりだ!"」


その声に呼応するように、本はひとりでに開き、更に裂魔と茂成を包む大きな水色の物体を作り出す。


その物体は光を放ち、瞬く間に裂魔と茂成を消した。




───そう、先程の本は、異空間に2人を飛ばしたのだ。ゲームを、始めさせるために。


俺達側からは見えないため、無事を祈りつつ、茂成の帰りを待つ事になる。





───────異空間内──────



「……さて、ここに飛ばされたからには、何をするかはわかってるよな?裂魔クン」


『……我ら裂魔に"ヤミノミコン"によるカードバトルを挑んでくる者がいると聞いていたが、貴様がそうか』


「そうだ。俺は裂魔を狩る者……大江山茂成。

冥土の土産に、よーく覚えておくんだな」




「さあ、カードをセットしな!」


『ふっ。貴様ら人間如きに負けるつもりはない!!むしろ貴様に引導を渡してやるわ!』



(まずはセットだ。

アバターキャラクターカードを一枚

40〜60枚デッキを一つ

1〜10枚の必勝カードデッキを一つ用意が必要で、


今回は52枚のデッキと3枚の必勝カードデッキをセットして……と。


ゾーンは

         戦場



         エネ       山札

                  墓地


        アバター


と、ざっとこんな感じだな)


「"ルキフグス"……セット!」


(アバターカードもセット完了だ)


『"バーサーカー"セットだ』


「捻りのねえ名前だな。クズはカードのネーミングセンスすらクズなわけか」


『……名前などどうでも良いだろう』


「ま、それもそうだな……」



(初期手札を6枚、ドロー……


俺はルキフグスをアバターにしてるから、ライフは16。ヤツはあのバーサーカーってのでライフが12。最初っから優勢だな)



『……先行は譲ってやろう。さっさとドローしろ』


「へっ、そりゃありがてえ。

じゃあ先行ターン、ドロー!」


「カードを1枚エネゾーンに置く」


「使えるカードもないし攻撃できるモンスターやキャラクターはいない。メインとバトルを飛ばしてターンエンドだ」



━こうしてターンが繰り返され、茂成の3ターン目━


「俺のターン。ドロー!」


「エネをセットしてエネを3枚レストするぜ」


『……ほう、動いてくるか』


「魔法カード"魔王の施し"発動。このカードは俺が手札を捨てた分エネを山札から置く事が出来る。俺は手札を2枚捨てて、カードを2枚山札からエネゾーンに置く。そしてターンエンドだ」


茂成の手札が4枚、エネが5枚になる。


(エネを一気に2枚増やしたか。……まぁ良い。次のターンから速攻で攻めれば、豊富なエネを使わせる前に倒せる)


『俺のターン、ドロー』


『エネを1枚セットして、エネを3枚レストする』



『"合理的な剣士"を召喚する。

コイツはキャラクターカードで、召喚した時にカードを1枚引き、カードを2枚まで山札の下に戻す事により、与えるライフダメージをプラス出来る』


剣士が呼び出され、裂魔の手札が5枚になる。


『コイツは元々3のダメージを貴様に与えられるから、2プラスされて5ダメージを与えられる』


『バトルフェイズ!合理的な剣士で攻撃!!』


剣士が斬りかかり、茂成に5ダメージを与える。茂成のライフが11になる。


『ターンエンドだ』


(これであと1ターンもてば、合理的な剣士をもう一体出して、更にバーサーカーを"起動"させて攻撃して勝利まで持っていけるな)


アバターは、条件を満たす事で起動し、攻撃可能になる。


バーサーカーの起動条件は"エネゾーンのカードを4エネにする事"。



「……俺のターン、ドロー」


「エネにカードを1枚セット」


茂成のエネが6枚になる。


「エネを3枚レスト。魔法カード"放浪者の黄昏"発動。通常なら1枚ドローだが、エネが5枚以上あるから山札からカードを3枚引くぜ」


茂成の手札が6枚になる。


「更に、3枚レスト。"ブレスウィザード"召喚」


白い息を吐き続ける魔術師が出現する。


「コイツは、エネが6枚以上あって相手が一回以上攻撃した後に召喚出来る特殊なカードだ」


「コイツの召喚時、俺の墓地にあるカードを全て除外して、その分山札からカードをドロー出来る。4枚除外して4枚ドローだ」


茂成の手札が9枚になる。


「まだまだ行くぜ。捨てていた"見習い魔術師くん"の除外効果発動!カードを1枚山札からドロー出来る」


茂成の手札は、これで10枚に。



『……手札を増やしても意味はないだろう』


「どうかな?バトルフェイズ!」


「俺の"ルキフグス"は、エネが6枚以上の時に"起動"し、攻撃可能になる。そして、2回攻撃だ!」


ルキフグスが現れる。


「まずは攻撃!その時にルキフグスの効果で山札の上から3枚を見て、魔法カードを1枚エネゾーンに置き、残りを山札の下に置くぜ」


茂成のエネゾーンが7枚になる。

ルキフグスが紫色の魔法で剣士を攻撃する。剣士は消滅する。


「ルキフグスのパワーは5500。剣士は2000だから簡単に倒せるぜ。後は2回目のルキフグスの攻撃による2ダメージを喰らえ!!」


「……と、その前に攻撃時効果も使って、と」


茂成のエネが8枚になる。

ルキフグスの魔法により裂魔に2ダメージが入り、裂魔のライフが10に。


『ぐっ!……しかしまだまだ、勝負はつかんな』





「それはどうかな?」


『……なに!?』






「必勝カード発動!!」


茂成が必勝カードデッキから1枚引き、裂魔に見せつけた。


「"ルキフグス・マジック・バースト"!!

このカードは手札を全て捨て、その分だけ相手にダメージを与える俺の必殺カードだ!!



さあ、己の愚かさを悔め!

そして後悔し、消えていけぇ!!」



ルキフグスが、水色の光線を放つ。

裂魔はそれを喰らい、10ダメージを受ける!!



『ぐあああああああ!!!

……こ、こんな奴に……ぎゃああああああ!!』


そして、裂魔はライフが0となり、消滅した。







「終わったぜ」


茂成が、戻ってきた。

どうやら勝ったらしい。目立った外傷もないし、楽勝だったようだ。



「お疲れさん。やっぱ早かったな」


「まあ、大した事ない奴だったしな。……そろそろ日も暮れる。帰ろうぜ」


「ああ、そうだな」




この世に蔓延る裂魔を狩る者達。


これは、そんな彼らが出くわす厄災の物語。




────────あとがき────────



こんにちは。

初めまして。Fミクと言います。

前からやってみたかったオリジナルカードゲームの話です。まあ、気長に見ていってください。


ではでは〜〜



最後に、「ヤミノミコン」の少し詳し目のルール説明を載せておきます。


ルール


アバターキャラクターカードを一枚

40〜60枚のデッキを一つ

1〜10枚の必勝カードデッキを一つ用意


盤面の置き方


         戦場



         エネ       山札

                  墓地


        アバター


ゲームの流れ


初期手札は6枚

アバターに応じてライフが設定

モンスターカード、キャラクターカード、アバターキャラクターカードの攻撃でライフを削り切った側の勝ち


ターンの流れ


ドローフェイズ

・ターン開始時の効果処理

・通常のドロー(一枚)

エナジーフェイズ

・エネにカードを一枚置く

・エネに置いて効果を発動するカードの効果はこのフェイズに解決する

メインフェイズ

・モンスターカード、キャラクターカード、魔法カードなどをエネをレストしてプレイ

・アバターカードの効果の発動や、条件を満たした必勝カードの発動も可能

バトルフェイズ

・相手のレストしているモンスター、

または相手のアバターに攻撃。

エンドフェイズ

・ターン終了時の効果処理

・ターンを終了する。



各種カード説明


アバターキャラクターカード

プレイヤーがゲーム中変身するキャラクター。

効果を発動したり、条件を満たして攻撃を行なったり出来る。



魔界紳士 ルキフグス

アバターキャラクターカード 属性 炎

パワー5500 打点 2

カテゴリ「魔界」


・このカードをアバターとする場合、プレイヤーのライフは16となる

・このカードをアバターとする場合、「魔界」カテゴリのモンスターカード、キャラクターカードをデッキに入れる事が出来る。

・エネゾーンのカードが5枚以上の場合のみ、このカードは攻撃出来る

・このカードが攻撃する時、山札の上から3枚を表向きにして、その中にある魔法カードを一枚エネゾーンに置き、残りを山札の下に置く。そうした場合、そのターン中このカードの打点を+1する。



モンスターカード

通常のモンスターで、アバターキャラクターカードで指定されたカテゴリのモンスターのみデッキに入れる事ができる。


森の番犬 スリープドッグ


コスト3 パワー2500 打点1

カテゴリ「森」


・このモンスターを戦場に出した時、相手の「森」カテゴリ以外のモンスターを一体レストする。そのモンスターは次のターンにライズ出来ない。



キャラクターカード

モンスターカード同様にアバターキャラクターカードで指定されたカテゴリのカードのみデッキに入れられるが、6枚まではカテゴリ外のキャラクターカードを採用出来る。


放浪する竜人 ドラコニス=マラク

コスト4 パワー1500 打点0

カテゴリ「ドラコニア」「放浪者」


・このカードを戦場に出した時、「ドラゴン」カテゴリ以外のモンスターを一枚、手札に戻す

・「ドラゴン」カテゴリのモンスターを場に出した時、カードを一枚引く



魔法カード

手札から使用でき、使った後は墓地に行く。

カテゴリ関係なしに採用出来る。


放浪者の黄昏

コスト3


・カードを一枚引く。エネが5枚以上の場合は一枚の代わりに三枚引く。


必勝カード

キャラクターカードに一枚につき一枚附属するカード。

記載されている条件を満たし、場に指定のキャラクターが存在する場合に発動出来る。


ヨルムンガンド・オーバーブレス


条件:手札が10枚以上

・相手のモンスター、キャラクターを全て破壊する。その後、手札を5枚まで墓地に送り、その数だけ相手に1ダメージを与える。



デッキルール


・カードの最大枚数は4枚。

・カテゴリ外のキャラクターカードは6枚まで

(種類は6枚までであれば自由)


現在は禁止、制限は無し。

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