再会

 …あれ?


 …ここは?


 セガワは突如として過去の時代、2009年の学校の帰り道に戻っていることに気づきます。


 …そうだよ。僕は高校生のセガワだ。


 彼の手元にはなぜか交通費分の小銭があります。


 …どうして僕はこのお金を持ってるんだ…?


 その時、突然背中で何かにぶつかり、驚いて小銭を落としてしまいます。


 …いて!


「急に止まるなよ」


 どこかの男子高校生がセガワを邪魔そうに舌打ちします。セガワは謝りながら、しゃがんで小銭を拾い集めます。


 セガワ

「すみません…」


 何をしていたんだっけ…?何か…大切なことを…思い出せない気がする…


 翌日、セガワは学校にいましたが、空虚を眺めてばかり。休み時間には周りの楽しそうな話し声を背に、机にうつ伏せになって過ごしています。頭の中で物語を考えて、その中でキャラクターを動かして再生を何度もさせて暇を潰すのです。


 ある日セガワは、ときどき仲良く話してくれる女の子に恋心を抱いてしまいますが、過去の恋愛の失敗の経験より、この感情は外部に出さず創作活動にぶつけようと思い至りました。


「(そういえば昨日、面白い本を買ったな…帰ったら書き込んでみよう)」


 セガワ

「何かいい案がないかな…そういえば、ニコニコ動画で流行った「ゆっくりしていってね」からとって、ユックにしよう。」


 彼は「ユック」という名前のキャラクターを考え、白い本にその設定を書き始めます。


 漫画の中で、セガワの感じている孤独や異性に対する憧れを、強く反映することができました。もはや、ラブレターの漫画による暗号化でした。


 しかし、交通費を返すシーンの直前で、続きが思いつかずに悩みます。


 そして、そのうちに受験勉強のシーズンに差し掛かり、漫画を描く時間が取れなくなってしまいます。


 セガワ

「このシーンの後…どうしよう…?でも、もう受験勉強を始めないと…」


 次の年、セガワは浪人生になりました。


 次の年、セガワは大学生になりました。


 セガワは大学生になった後、ユックの物語の続きを考えるために新たなキャラクターをいくつか考案しました。レオンとニーナはその中の二人でしたが、物語の続きを作ることはできませんでした。


 白い本は元々漫画のために使われていましたが、最終的には日記として使用され、2019年に10年間をかけて完結させられました。セガワは満足そうに本を閉じます。


 2023年、ChatGPTによるGPT北高校の登場に触発され、セガワは小説を完成させました。


 そして2024年、32歳になったセガワは、白い本を取り出し、漫画の続きの物語を書く決意を固めます。


 ユックは再びGPT北高校に登校し、新たな日常を過ごしています。


 澤村

「ここってChatGPTの恋愛ゲームの世界なんだよね?」


 水鳥川

「ええ、そのはず…ですが…」


 澤村

「どうしたの?」


 水鳥川

「GPTsの規定改正により、私たち存在できないはずですの…」


 澤村

「ふーん?」


 水鳥川

「…もしかして私たち、本当に誰かの創作物の主人公になってしまったのではないかしら?!」


 あゆみが笑いながら言った。


「それ、また始まったよ。紫苑の“物語の主人公”シンドローム!」


 ーーーーー


 五百雀 こころ

「ユック、こんにちは!今日の放課後、一緒にカラオケ行かない?」


 澤村 あゆみ

「そうそう、みんなでワイワイ楽しもうよ!」


 澤村あゆみと五百雀こころからのカラオケの誘いを受けた彼女は、嬉しくて、何故でしょうか。涙を隠しきれません。


 ユック

「はい!よろこんで!」


 白い本 完結 2009年ー2024年

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

白い本【私立GPT北高校】 セガワ @chobby75

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ