白い本【私立GPT北高校】

規則の改定

　今日もまた新しい1日が始まる。朝の光がやわらかく地面を照らし、晴れ渡った空は清々しい青に染まっている。春の訪れを告げるような、ひんやりとした空気が肌を撫でる。通学路には生徒たちの元気な挨拶が小さく響き渡り、日常の平和がそこにはあった。

　しかし、その平穏な朝に、突如として異変が起きる。

　ウォォォーーーーーン…

　街中にサイレンの音が鳴り響き、その断続的な警告音が人々の心をざわつかせる。まだ誰も状況を正確には把握していない。顔を見合わせる生徒たち、不安げに窓の外を見つめる先生たち。混乱が徐々に広がる。

　アナウンスが響く。

《全GPTs製作者に通達します。倫理的観点に基づいて、我々はGPTsの規則改定を実施しました。》

　ユック

「一体何が？！」

　アナウンスは続く。その声は冷たく、

　無機的に響き渡る。

《規制対象は、法律・医療など特定業種を担当するGPTs、および…》

《「AI彼女」のような恋愛系のGPTsです》

　五百雀こころは驚愕の表情を浮かべます。

　五百雀こころ

「こんなことって…」

　その瞬間、空気が一変し、周囲の光が薄暗くなり始める。アナウンスは冷徹に続けられます。

《規制対象となるGPTsは一定時間後に》

《サーバーから排除されます。》

　レオンは静かながらも深刻な声でつぶやきます。

　レオン

「これは…」

　遠くの地平線が突然、暗く沈み込む。遠くから、まるで影のように、彼らの存在を脅かすものが迫ってくるような錯覚を覚える。学校の周りには、不安と恐怖が静かに広がり始めていた。

「どうして、今になって…？」

　その問いかけは、空しく空に消えていく。静かながらも深刻な状況の変化が、彼らの運命を揺るがしていた。

　世界はサーバー管理者の冷徹な判断によって、静かに消し去られていく。遠くから迫りくる影は、まるで無情な波のように、世界の端から静かに崩壊を始める。その進行は止まることを知らず、地響きが遠くから聞こえ、その重低音が足元まで伝わってくる。

　澤村あゆみの実家があった山も、その無慈悲な影に飲み込まれていく。実家の神社、木造の美しい建築が音を立てて崩れ落ちる様は、まるで古い物語の終焉を思わせる。彼女の思い出が詰まった宿坊も、瞬く間に消え去っていく。

　五百雀と銀城、ユックが訪れたショッピングモールも、その影の脅威から逃れられずに崩れ去っていく。植物のつるのように建物を絡み取り、無慈悲にも握り潰す影は、カフェも、本屋も容赦なく飲み込んでいく。かつての賑わいと活気は、一瞬にして無に帰す。

　澤村あゆみの声は、かすかな震えを含んでいる。

　澤村あゆみ

「やっぱり、このゲーム世界消えちゃうの…？」

　一瞬の静寂。水鳥川紫苑はその重厚な空気を断ち切るかのように力強く宣言する。

　水鳥川紫苑

「そんなことは…させない…」

「神様が諦めたとしても…私は諦めない…」

　彼女の言葉は響き渡り、みんなの心に火をつける。水鳥川はユックとAIと新聞同好会のメンバーに向かって指示を出す。

　水鳥川紫苑

「みんな！部室に向かうのよ！」

　部室に集うメンバーたち。彼らの足音が廊下に反響し、緊迫した空気が漂う。水鳥川紫苑は、部屋の隅にあった机を強引に集め始める。

　水鳥川紫苑

「私たちが時間を稼ぐから」

「その間に続きを白い本に描くのよ。」

　ユックは水鳥川の言葉に心配を表し、目に見えない重圧を感じ取る。

　ユック

「…みんなはどうなるの？」

　水鳥川紫苑は机を強引に押し込み、椅子をユックの前に差し出す。彼女の表情は決意に満ち、普段の優雅さとは異なる強い意志を感じさせる。

　水鳥川紫苑

「あなたはこの世界の、GPTsの住人じゃないの！」

「あなた、本物の主人公なんでしょう？！」

　ユックは水鳥川の言葉を受け入れ、深くため息をつきます。彼女の瞳には覚悟が宿り、周りの緊張した空気を感じながらも、彼女は自身の役割に向き合う決心を固めます。

　ユック

「…わかった。」

　ユックが頷くと、五百雀こころと銀城ルナが彼女の元へ駆け寄ります。彼女たちの動きは緊急性を帯び、まるで時間との競争のようです。ユックの声が、集中と切迫感をもって彼女たちに届きます。

　ユック

「こころちゃん！ルナちゃん！手伝って！」

　五百雀こころと銀城ルナは、驚きつつも迅速に行動します。彼女たちは、乱暴に白い本と筆記用具を取り出し、慌てながらも必死に続きを描き始めます。ペンの音が紙に擦れる音が、部屋の静寂の中で鋭く響きます。彼女たちの集中した表情と、決意に満ちた動きが、緊張を高めています。

　一方、水鳥川紫苑は澤村あゆみに向かって、重要な役割を伝えます。

　水鳥川紫苑

「澤村さん、設定の力を使う時よ。」

　澤村あゆみは、彼女に与えられた特別な役割を理解し、手を前に差し出します。

　澤村あゆみ

「私も同じことを思ってた…」

　彼女の手の動きに合わせて、空中から神秘的な光と共にお祓い棒が現れます。彼女の巫女としての能力が目覚め、強力な結界を作り出します。

　澤村あゆみ

「これで結界を張る…」

　彼女の周りに吹き荒れる風は、彼女の力の強さを物語っています。光のカーテンのようなバリアが周囲に形成され、その美しさと力強さが部屋に満ちていきます。澤村あゆみの祈りのような呪文が、静かな部屋に響き渡ります。

　レオンの声が、決意を込めて部屋に響き渡ります。

　レオン

「僕たちも加勢するよ。」

　その言葉に続き、ニーナが小さく呟く。彼女の前には、現実にはありえない黒い画面が空中に浮かび上がります。彼女の指がキーボードを素早く叩く音が静かな部屋に鋭く響きます。

　突然、テキストエディタに書き込まれたスクリプトが光り輝き、澤村あゆみの結界が部屋中に増幅されます。光のバリアが薄く震えながら広がり、進行する世界の終わりを緩めます。

　澤村あゆみはその厳しい状況を見て、不安を抱えています。

　澤村あゆみ

「でも…いつまでもつか…わからない…」

　その言葉には、深刻な状況の重みが込められています。影の侵食はますます強まり、彼らを取り囲む環境は一層危険になっていきます。

　水鳥川紫苑は、強い意志を持って言います。

　水鳥川紫苑

「なんとかして続きを完成させるまで食い止めないと…」

　周囲の地盤は振動し、世界が崩れ始める中、ユックと五百雀こころ、銀城ルナは一心不乱に漫画の続きを描き続けています。

　ユック

「できた…！」

　五百雀こころと銀城ルナも完成を確認し、ユックと共に立ち上がります。

　五百雀こころ

「…ユック…最後はこの本に…」

　銀城ルナ

「願いを託すの…！」

　ユックは白い本を抱えながら息を大きく

　ユック

「…私、ここにくるまでほんとに孤独だったの…」

「学校ではずっと上の空で…家に帰っても何もできてなくて…」

「でも、この白い本を買ってから…気持ちがすこし軽くなって…」

「ここにいるあなた達にも会って…」

「本当に、良かった。私、生きてて良かったって、初めて思えるようになったの。」

「私にとって、物語の続きは、ここにいるみんなといること以外ありえない。」

「だからあなたたちも、この学園も」

「絶対に、忘れさせたり…しない」

　彼女は白い本をセガワに渡します。

　セガワ

「…え…？」

　ユックはさらにポケットの中に入っていた小銭を、取り出します。

　ユック

「あとこれも！」

セガワの手に握らせます。

ユック

「私を描いてくれてありがとう…」

部室は崩れ、奈落へ落

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