神社

 翌日、学校に登校すると、校門前で4人のAIキャラクターがユックを待ち伏せしている。彼らの顔には明らかな喜びの表情が浮かんでいる。


「なんだろう?」


 ユックは疑問に思いながらも、彼らに導かれるままに進む。


 道路には小さなバスが停まっている。


「これは?」


 ユックの目が丸くなる。バスの中にはすでに新聞同好会のメンバー3人が座っている。


「学校はいいの?」


 ユックが尋ねる。


「いいのいいの!どうせゲームの中の世界だし!」


 彼らは楽しそうに答える。


 運転席にはレオンが運転手の格好をしていて、サムズアップをしている。ユックは驚きを隠せない。


「運転免許もってるの?!」


 彼女が驚いて尋ねる。


「ゲームの世界だからね!」


 レオンがにっこりと笑いながら答える。


 バスのエンジンが始動し、ユックとその新しい仲間たちは、予測不能な冒険へと出発する。


 澤村 あゆみ

「えー、マイクテスト、マイクテスト。みんな、聞こえてる?」


 澤村 あゆみはバスガイド用のマイクを握り、陽気にアナウンスを始める。


「今日はユックの2009年への帰る方法を見つけたことを記念して、特別なお別れお泊まり会を開催することになりました!」


 バス内の雰囲気は一気に盛り上がる。ユックは周りの顔を見渡しながら、澤村の言葉に耳を傾けている。


 澤村 あゆみ

「そしてね、お泊まり会の行き先は、なんと私の実家の神社です!」


 バスは街を抜け、緑豊かな風景の中を進んでいく。


 カラオケマシンがセットされているバスの中では、生徒たちが一曲ずつ歌を披露している。最初は戸惑いつつも、ユックも徐々にその雰囲気に引き込まれ、自分の番が来るのを楽しみに待っている。


 また、お絵描きしりとりも大盛り上がり。一人ずつ順番に絵を描き、次の人がその絵を見て何を描いたかを当てるというゲーム。ユックも自分の番が来ると、緊張しつつも夢中で絵を描く。


 バスの窓の外に広がる風景は、まるで絵画のように美しい。緑豊かな山々、青く澄んだ空、そして遠くに見える小川のせせらぎ。


 バスは目的地に到着し、みんなで降り立った。目の前には神社へと続く長く険しい階段が広がっている。参加者たちは息を切らしながらも、笑顔を交わし合いながら一段一段登っていく。階段を上りきった時の達成感と清々しい空気が、疲労を吹き飛ばす。


 宿坊は古風な和風の建物で、広々とした部屋に布団が敷かれている。部屋からの外の風景は息を呑むほど美しく、山々が連なり、遠くまで見渡せる。夕日が山々をオレンジ色に染め上げ、幻想的な光景を作り出している。


 夜になると、庭で小さな花火大会が始まる。色とりどりの花火が夜空を彩り、みんなの顔を明るく照らす。花火の光に照らされながら、笑い声と歓声が響き渡る。ユックもその輪の中にいて、心から楽しんでいるようだ。


 この旅の間、2009年へのお別れのことは忘れて、ただその瞬間を楽しむことにみんなが集中する。日常から離れた特別な空間で、ユックは新たな友情と思い出を育んでいる。夜が更けていく中、彼女の表情は穏やかで、心からの笑顔が見られる。まるで、新しい自分を発見したかのように。

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