第10話ー短歌「誕生日」

 実は、キヨシとミユキは、同じふたご座である。

 今日は、2024年5月23日。

 キヨシとミユキは、同じ誕生日である。

 …

「今日は、何の日?」

 とカフェで、アイスカフェオレを飲んでいるミユキは、キヨシに尋ねた。

「今日は…」

 とスマホで、キヨシは、検索をした。

「今日は、キスの日、恋文の日だって」

「何かねぇ、キスの日って、いやらしい」

 とミユキは、怒った顔をして言ったら、キヨシは、俯いた。

 …

 本当は、キヨシは、ミユキのことが、好きになっていた。

 しかし、ミユキだって、この半年で、キヨシは、随分、成長をしたと思った。

 例えば、キヨシは、最初、2023年12月に、見た時は、顔つきが暗かったのに、今は、どこか充実している顔になっている。

 ミユキも、毎日、ウキウキして会社へ行くようになった。

「あのさ、ミユキちゃん」

「何?」

「本当はさ、ミユキちゃんと僕の誕生日だよ」

「だよね」

「うん」

「手紙を持ってきたよ」

「え…」

「本当に」

「たまたまだけどさ」

「今日は、恋文の日だもんね」

 とミユキは、言った。

 そして、レターセットを、キヨシは、取り出した。

 そこには、ミッキーマウスとミニーマウスのイラストを描いていた。

「これは、誰が、描いたの?」

「俺だよ」

 と、キヨシは、恥ずかしそうに言った。

 顔が、真っ赤になっていた。

 …

 ミユキは、思わずこう言った。

「ミッキーマウスとミニーマウスの絵、可愛いよ」

「そうかな?」

「そうよ!」

「ありがとう」

「もらって良いの?」

「良いよ」

 と言った。

 そして、ミユキは、思わず、キヨシの手をつないだ。

 キヨシの手は、温かい感じが、した。

 …

 夕方になって、品川駅から歩いていたキヨシと、ミユキだったが、その時、ミユキは、思わず、

「今日は、一緒に帰ろう」

 と言った。

 品川駅から京急快特三崎口行きに乗って、これから、横浜駅へ向かおうとした。

 京急快特三崎口行きが、メロディー『赤い電車』とともに、入線してきた。

 ファーンとサイレンを鳴らして、入ってきた。

 プラットフォームには、帰宅する会社員やら学生が、多くいた。

 みんな、スマホを片手に何かを観ている。

 泉岳寺方面から、品川駅に、京急快特三崎口行きが、入ってきた。

ー品川。品川でございます。新幹線、山手線、横須賀線は、お乗り換えです。

 とアナウンスが、聞こえてきた。

 …

 京急快特三崎口行きの車内は、クロスシートだ。

 そして、久しぶりに、ミユキは、キヨシと並んで座った。

「今日、ありがとうね」

「いや」

 と言った時、ミユキは、思わず、キヨシの唇にキスをした。

 キスは、甘いチョコレートの味だった。

 それは、キヨシへのミユキの告白だった。

 周りの客は、そんなミユキとキヨシに興味は、なかった。

 そして、キヨシは、こう短歌を詠んだ。

ーバースデー思わず書いた恋文を帰り道にはキスもらって

(意味)誕生日にラブレターを書いたよ彼女に。帰りの車内で彼女にキスして貰った

 その日は、二人で、夜の逢瀬を、横浜の自宅で楽しんだらしい。

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和歌を詠む マイペース七瀬 @simichi0505

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