第9話ー短歌「野球」

 ミユキは、考えてみた。

 そもそも、キヨシは、少しは、アイドルばかりではなく、野球にも関心を持ってほしい、などと考えてみた。

 いや、と少し、腕を組んで考えてみた。

 ミユキは、中学・高校時代、ソフトボール部にいた。

 そして、ミユキは、今でこそ、セミロングだが、10代の時は、ショートカットだった。

 一つは、ミユキは、中学時代、野球部でショートを守っていた男の子、ダイキ君が、好きだったのだが、違う女子と高校を卒業してから、付き合っていた。それを知った時、ミユキは、一晩、ベッドで泣いていた。

 …

 ミユキは、だが、少しだけ、思った。

 最近、キヨシが、変わってきたと思った。

 最近では、キヨシは、会社の休憩時間、ミユキとオセロやら将棋をしている。そして、会社が終わったら、スポーツクラブへ行って運動をしている。そして、この間の日曜日は、一緒に、千葉の房総半島へ行って、畑で野菜を収穫してきた。

 そして、顔がイキイキしている。

 そうだ、今度、東京ドームへ行けないか、と思った。

 ミユキは、読売巨人軍の投手菅野智之選手やショートの坂本勇人選手が、好きだが、どうだろうか?と思った。

 しかし、いつも、アイドルの話しかしない、キヨシは、大丈夫だろうか?

 と思った。

「キヨシ君」

「何?」

「今度の日曜日だけどさぁ」

「はい」

「野球の巨人阪神戦を観に行かない?」

 と言った。

 キヨシは、興味なさそうな顔をしていたのだが、その時、ミユキは、そっと、キヨシの手を握って

「行かない?」

 と言った。

「分かったよ」

「ん?」

「行くよ」

 と言った。

 …

 次の日曜日だった。

 東京メトロ丸ノ内線で、後楽園駅まで行った。

 勿論、野球に興味のないキヨシだって、びっくりしていた。

 ミユキは、久しぶりのような気がしていた。

 キヨシは、思わず、露出の激しい若い女の子を見そうになったけど、

「キヨシ君は、私と手をつなぎなさい」

 とミユキは、お母さんになった感じで、キヨシに言った。

 そして、球場の前では、ジャイアンツのユニフォームを着た観客が、一杯いた。そして、ミユキもキヨシも、お互い、お酒が飲めず、だが、場内に入る前に、弁当を買って、お茶を買って、入った。

 今日のカードは、巨人阪神戦。

 ピッチャーは、読売巨人軍は、菅野智之。

 阪神タイガースは、西勇輝。

 やはり、身体が、そこらの会社員の男性と違うと、キヨシは、思った。

 ここで、キヨシは、短歌を詠んだ。

ーかの人の身体つきたるやたまげたや野球選手凛々しきなりけり

(意味)あの選手の身体つきはびっくりしたやはり野球選手だから立派な身体なぁと感心した

 ミユキは、その短歌を詠んでいて

「キヨシ君も、野球に関心が持てた?」

 と言った。

 その時だった。

 ミユキは、キヨシに

「私の初恋の相手は、野球部の人だったよ」

 と言った。

「面白くない」

 と怒ったように、キヨシは、言った。

 その時、ミユキは、

ーしまった

 と思いながらも、この時、キヨシは、嫉妬したと思った。

 だが、キヨシは、野球のカードを見ながら

ーかの人のいにしえの話嫉妬した吾してみよう野球なりけり

(意味)彼女が、昔のコイバナ嫉妬した俺もしよう野球を

「キヨシ君でも、嫉妬するんだ」

「悪いか?」

「今度、する?」

 と言った。

 だが、見かけによらず、キヨシは、身体が細い。

 しかし、40代のキヨシだって、実は、10代の時、ソフトボール部のショートを守っていたショートカットの女子が好きだった。

 そして、10代の時、キヨシは、ショートカットの女子のマサミちゃんのブ〇マ―姿で走っている姿が、好きだった。そして、お尻が可愛いなどといやらしいことを、考えて妄想していた。

「キヨシ君」

「そんなんじゃ、野球できないよ」

 と意地悪を言ったが、

「今度、キャッチボールをする?」

 と言った。

 月曜日になって、休憩時間に、キヨシは、ミユキとキャッチボールをしていたらしい。しかし、キヨシは、よく暴投していたが。

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