第8話ー短歌「将棋」

 ミユキは、少し、感じていた。

 そもそも、キヨシは、スマホで、ずっとゲームをしている。

 このこと自体、悪くはないと感じている。 

 しかし、それで良いのかと思った。

 …

 世間では、和歌以外の世界だってあるのだと、ミユキは、感じる。

 例えば、テレビを観てみる。

 すると、世間では、将棋には、藤井聡太名人やら羽生義治名人がいる。いや、そもそも、ミユキは、趣味で、学生時代、将棋やオセロをしていた。しかし、キヨシは、和歌を詠む以外に趣味を持てないのだろうかといつも思っていた。

 ミユキは、キヨシの和歌のセンスは、凄いと思っていた。 

 会社のイベントで、和歌を詠んだのは、凄いと思っている。

 だが、キヨシだって、変わってきたのだと実感できる。

 キヨシは、ミユキと付き合ってから、脂肪肝を治すために運動を始め、そして、海老名の親戚の家で、トマトを収穫し、そして、一緒に東海道新幹線で関西へ向かった。

 だが、まだ、ミユキは、キヨシを付き合い始めて、もっと遊ぶことだってあって良いと感じていた。

 ある日だった。

 会社の休憩時間だった。

「ねえ」

「何?」

「今から、将棋しない?」

 とミユキは、言った。

 すると、キヨシは、だんまりを決め込んだ。

「どうしたの、黙って?」

「いや、その…」

「なんでも良いから話してみてよ」

「それが、その…」

「いや、私たち、友達だよ」

「あのさ…」

「うん」

「将棋の指し方、分からないんだ」

「だったらさ」

「うん」

「私が、将棋の指し方、教えようか?」

「良いの?」

「良いよ」

 とミユキは、笑顔で言った。

 「まずね、将棋の駒の置き方だよ」

 と言った。

 そして、駒の置き方、駒の動かし方を、ミユキは、教えた。

「じゃあ、今から、始めるね」

 と言った。

 初めて観ても、勝てなかった。

 当たり前だった。 

 だが、キヨシは、1996年10月~1997年3月にNHKで放映されていた連続テレビ小説『ふたりっ子』のドラマで将棋を指していた内野聖陽を思い出していた。

「どうだった?」

「ミユキ、強いよ」

 と、キヨシは、顔が真っ青になっていた。

 当然ながら、王将、金、銀、桂馬、香車、角行、飛車の動かし方を覚えるのが、必死だった。

 ここで、またもや、キヨシは、短歌を詠んだ。

ー初めての将棋すなりかの人と初めて負けた難しい将棋

(意味)初めて将棋をしたとガールフレンドと初めて負けたよ難しいなぁ将棋も

 「当たり前じゃん」

「まあ、そうだけど」

「だけど、キヨシ君は、私と一緒に将棋をしたら良いよ」

 とミユキは、得意げに言った。

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