第7話ー短歌「東海道」
2024年5月のことだった。
キヨシは、ミユキと二人で、東京駅から東海道新幹線で、関西へ行こうとした。
京都へ行き、大阪へ行こうとした。
ミユキは、いつも、東京とか横浜しか知らないキヨシへ、見聞を広げるために、東海道新幹線のぞみ号新大阪行きに乗った。
2024年5月のゴールデンウイークだった。
朝7時に、東京駅で、二人は、会った。
そして、東海道新幹線のぞみ号のプラットフォームで、二人は、牛カルビ弁当を買った。
こんな時、少し、思った。
「ねえ」
「何?」
「ミユキでも、カルビ弁当を食べるんだね」
「悪い?」
と、考えてみた。
そもそも、ミユキは、声優の内田真礼に似ていて、可愛いのだが、そんな彼女だって、一応、臭いがきついカルビ弁当でも、食べたくなるのだ。
「私だって、カルビ弁当を、食べたいときはあるよ」
と言った。
そして、少し、怒った顔をした。
その時、キヨシは、短歌を詠んだ。
ーかの人がカルビ弁当食べるなりこの光景たまがりけり
(意味)彼女が、カルビ弁当を食べていた光景を見た思わずびっくりして色気がなくなった
そう詠んでいたら
「もっと、夢のある短歌を詠みなさい」
と怒った。
のぞみ号新大阪行きが、東京駅を出発した。
カタンカタンと音を立てて、出発した。
品川、新横浜、静岡県を通って、名古屋、京都に着いた。
「キヨシ君」
「何?」
「京都に着いたよ」
「うん」
「どこへ行く?」
「三条へ行く?」
京都駅からバスで、三条大橋まで行った。
とにかく、日本人観光客もいるが、ビジターも多い。
「ミユキさんね」
「うん」
「新橋イチローも、短歌を詠んだって」
「へぇー」
「ー三条もいにしえ始まる東海道今となってはビジター多し」
「どんな意味?」
「京都の三条大橋も、昔は、東海道五十三次の始まりだったけど、今は、そんな風情のないビジターが多いなぁって」
「キヨシ君も詠んだら?」
その時、関西弁の女性と一緒に「あのさ、オレ、横浜から、来たんだけどさぁ」と、横浜訛の言葉が聞こえてきた。
ー三条もいにしえ話す京都弁今聞こえるのは横浜弁
「ねえ、その意味、何?」
「三条も、昔は、京都弁の言葉が、聞こえたが、今となっては、京都の文化と関係ない横浜弁が、聞こえて関西の風情を壊している」
「まあね、私たち、京都へ来たら、関西弁を聴きたいのに、横浜弁だもんね」
と言った。
二人は、そのまま、三条から京阪電車で、宇治へ行った。
そうだ、2024年5月は、NHK大河ドラマ『光る君へ』で、『源氏物語』の作者紫式部と、関白の藤原道長だもんな。吉高由里子さんに柄本佑さん、高畑充希さん、黒木華さんが、出ているとか、思った。
これから、宇治の源氏物語ミュージアムや宇治の平等院鳳凰堂へ行こうとした。
「何かあるかもしれないよ」
と二人で言った。
しかし、だった。
ミユキも、キヨシも、同じように「関西の文化」を知りたいと思ったが、「ダメじゃん」とか「関西って意外とつまんねえなぁ」と東京とか横浜の言葉が聞こえてきた。
そして、がっかりしたキヨシは、また、短歌を詠んだ。
ー宇治へ行き聞こえてきたのは東京弁聴きたいのは京都弁
(意味)宇治へ行き、平等院鳳凰堂や源氏物語ミュージアムへ行き、関西の文化を知りたかったのだが、聞こえてきたのは、東京の言葉でがっかりだ。実際に聴きたいのは、京都弁
「そうだね」
「何が?」
「がっかりした」
「これから、大阪へ行くか」
「うん」
と言った。
二人は、京都からそのまま京阪電車で、大阪淀屋橋まで行った。
しかし、風景は、それほど、東京とか横浜の都会と変わらないのではないかと思った。
ただ、京阪電車の特急出町柳行きに乗っていたら
「いや、ええな、アヤカのカレシ、優しいもん」
なんて、聞こえてきて、ミユキは、むっとした。
「うちの方が、可愛いやろ?」
と東京在住のミユキが、急に関西弁になった。
そうだ、ミユキは、嫉妬深いのだ。
そして、キヨシは、ここで、短歌を詠んだ。
ー関西弁かの人話す突然にその時感じた胸の高まり
(意味)普段は滅多に言えない関西弁を彼女は話した突然にその時感じたよ、胸の高まりを。
「これは、誰?」
「ミユキ」
「よろしい」
と言った。
通天閣も、なんばも、心斎橋も、道頓堀も、関西弁よりも東京弁がよく聞こえた。
ー道頓堀いにしえ聞こえた大阪弁今となっては東京弁
(意味)道頓堀だって昔は大阪弁が聞こえたが、今となっては、観光客の東京弁がよく聞こえた
その日の夜は、なんば駅前のホテルに泊まって、次の日は、ユニバーサルスタジオへ向かった。
ユニバーサルスタジオ自体は、楽しかった。
そして、パフォーマンスも、楽しかった。
そして、たこ焼きを食べ、お好み焼きを食べて、大阪メトロ御堂筋線で、新大阪駅から、東海道新幹線のぞみ号東京行きに乗った。
その時、キヨシは、こう詠んだ。
ー東海道関西尋ねる新幹線聞こえてきたのは東京弁
(意味)東海道新幹線で、東京から大阪へ行った。関西弁を聴きたかった。しかし、聞こえてきたのは、東京弁だった。寂しい。
「どう?」
「そうやね」
と、ミユキは、下手な関西弁で答えた。
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