第20話 電子書籍化を決めるまで
『勇者フルート物語』シリーズ第3巻「謎の海の戦い」が先週完結しました。
第0巻の「魔法の金の石」の電子書籍化もできて、8月3日に『BOOK☆WALKWER』で販売が始まる予定です。
電子書籍が無事に出版できたら、また改めて記事を書きますが、今日は出版に悩んだときに改めて考えた「自分がやりたいこと」について書きたいと思います──。
若い頃は「あれもやりたい」「これもやりたい」「あれもやらなくちゃ」「これもやらなくちゃ」と、希望と義務がごちゃ混ぜの状態の中で、毎日必死になっていた気がします。
義父母の目を盗みながら小説を書き続けた日々は、当時は本当に大変でしたが、今となっては懐かしい思い出です。
今は以前より時間に余裕ができたけれど、体力も確実に落ちました。
昔は午前3時過ぎにアラームをセットして起き出して、家族が起きてくる5時半まで執筆をする、なんて受験生のようなこともやりましたが、今はそんな芸当は不可能です。
夜に小説を書くことさえ、寝付きが悪くなって翌日に響くので、避けるようにしています。
余裕は増えたけれど、実際に何かができるパフォーマンスは落ちてきている。
悲しいけれど、これが現実です。
だから、「本当に自分がやりたいことだけを選んでやろう」と考えるようになりました。
時間は有限。パフォーマンスも落ちていく一方となれば、欲張らずに、やりたいことをよく吟味して取り組むのがベストです。
そんな中で、「本を出したいとずっと考えていたけれど、それは本当に私がやりたいことだろうか?」と改めて考えたのです。
私が『カクヨム』をまともに使い始めてそろそろ7カ月になりますが、使い勝手の良さにはいつも感心しています。
自分でHTMLファイルやCSSファイルを作る必要はないし、予約投稿もできるから投稿忘れもない。しかも様々なメディアに対応しているし、アップロードすれば自動的に大勢にお知らせできるシステムになっているし。
小説の発表の場が欲しいのであれば、本を出さなくても、『カクヨム』などの創作サイトを利用するだけで充分なはずです。
もちろん、コミケなどでも本を販売する方は、本を出すことが大きな発表の場になるのですが、私はコミケには参加していないので、「本=発表の場の拡大」にはなりません。
では、私はなんのために本を出したかった?
印税生活がしたかったから?
いえいえ、本の売り上げが微々たるものなのは、先に発達障害の本を自費出版して充分理解できました。※
特に、私のような長編書きはページ数がかさんで出版費用が膨れ上がるので、本の販売で儲けるなどというのは絶対に無理です。しかも巻数が多いシリーズ物では!
出版費用を考えただけで、とても採算が合いません。
※紙の本で出版した場合、作者に印税としてはいるのは価格の約1割と言われています。1,500円の本を出して、1冊売れたら作者の取り分は150円です。電子書籍なら、もう少し取り分は多くなりますが、よほど人気が出て本が飛ぶように売れなければ、生活できるほどの印税は入りません。売れ残り在庫を抱えれば、その分ロスになって、最終損益はマイナス(赤字)になります。
では、赤字になりそうだし、やっぱり本にするのはやめましょうか。
電子書籍にするのもなかなか手間がかかりそうだし。
う~ん、だけど……
『フルート』シリーズをいつか本にまとめたい、というのは長年の夢で、それを諦めるというのは、やっぱり容易なことではありませんでした。
できれば本にしたい。
紙の本は無理だから電子書籍で。
残していきたい。私がいなくなった後まで……
この年齢になったからこそ、そんなことも考えるようになったのです。
当初はAmazonのKDP(キンドル・ダイレクトパブリッシング)を利用して出版するつもりでいましたが、海外との口座取引や税金の登録の面倒くささに嫌気がさして、頓挫していました。
出版する際や出版後のフォローが今ひとつだという噂も、ためらう原因のひとつでした。
電子書籍を気軽に安く自費出版させてくれる出版社が日本にもあれば……!
ありました。
『カクヨム』と同じKADOKAWAグループの『BOOK☆WALKWER』で、簡単に出版できたんですね。
トップページにバナーがあったのに私は見逃していました。(連載のほうが忙しくて、そこまで見ていなかったんです……と言い訳)
実際に著者センターに登録してみたら簡単だったし、とてもスムーズでした。
電子書籍のためのEPUBファイルは一太郎ですぐ作れたし。
KDPではあんなに小難しそうで取っつきにくかったのに、と驚きました。
今は本が『BOOK☆WALKWER』の審査に通るのを待っている状態です。
これでうまくいったら、1巻、2巻、3巻…と電子書籍化していこうと思っています。
結局、私は何をやりたいのか。
自分の20年間のありったけを注いで書いてきた『フルート』の物語を、まとまった形で後に残していきたい。
いつかいつか──ひょっとしたら私がこの世を去った後でも、誰かがふとこの作品を見つけてページを開いて、「あ、けっこう面白いかも」と思って読んでくれたら。
いえ、もちろん、私が生きているうちにその声が聞けたら、もっと嬉しいですが。
でも、それが私の本当にやりたいことなんだ、と改めて気がついたので。
これからも、『勇者フルート物語』を推敲して完全版に仕上げては、電子書籍にしていきたい、と思っています。
というところで、今日はこれにて──。
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