第11話 結局、私は小説家になれたか?

 いよいよタイトルのテーマについて考えます。


 小説家ということばの捉え方にもいろいろあります。

 広義で考えれば、小説を書く人はプロアマ関係なくみんな小説家と呼べます。

 でも「小説でも書いてみようかな」と考えた人が、まだ短編1本も完成させないうちに、「私は小説家よ!」と言っても、周囲はそう思ってはくれません。

 ということは、小説家はもう少しレベルが高い小説書きにつける肩書きになるのだと思います。


「小説家」ということばを辞書で引いてみました。


【広辞苑第七刷】

 小説を創作する人。文士。作家。

【大辞林4.0】

 小説を書くことをなりわいとする人。作家。


 広辞苑のほうは「小説書く人はみんな小説家だよ」と言っていますが、大辞林のほうは「小説を仕事にしてる人だよ」と言っていますね。


 次に「小説家」をネットで検索してみました。


【Wikipedia】

 一般的に小説家とは、職業として執筆した作品によって収入を得ている者をはじめ、兼業で、他の職業と両立して執筆している場合も「小説家」と呼ぶ場合が多い。小説による収入は少なく、講演活動や小説以外の著述で生計を維持している著作家の場合でも、作品が広く知られているために一般に小説家と見なされている例も多いが、作品数が少ないか作品が広く出版されていない場合、小説家と見なされないのが普通である。


 あ、ばっさり一刀両断(笑)

「小説家はそれを職業にして収入を得ている人だよ。ただし、収入があっても社会的に知られていない人は小説家とは言わないよ」

 つまり、コミケで自分の小説を販売して収入を得ていても、世間に広く知られていなかったら、それは小説家とは呼ばないんですね。

 ……なるほど。


 さて、では20年かけてひとつのシリーズを完成させた私は?

 ずっと休まず書いてきたし、いろいろ考えながら書いてはきたけれど、結論から言えば「職業じゃないし、世間にも広く知られていないんだから小説家じゃないよ」ということになります。

 まあ、たしかにね。


 私は発達障害の子育て本を自費出版した数年前に、個人事業主になりました。

 ただ、登録している職種は「フリーライター」で、「小説家」ではありません。

 そういう意味でも、私は職業としての小説家ではないのですね。

 では何かと言えば、「物書き」が一番適切なのかな、と思います。

「作家」もそれで収入を得ている人に使う名称のような気がしますが、「物書き」はプロアマ関係なく使えそうです。


 では、これから私は物書きを超えてプロの小説家になりたいか?

 概要にも書きましたが、正直「?」です。


 確かにプロに憧れた時期もありました。

 でも、プロになるということは、クライアントからの依頼を受けて作品を作るということだし、当然ながら、その作品は売れる作品でなくてはなりません。

 本を出版する側だって、売れる本を出してもうけを出さなければ、会社として存続していけませんからね。

 だから、プロの作家は世間が「買って読みたい!」と思う作品を書いて、クライアントである出版社に渡すがあるわけです。


 カクヨムやなろうやアリファポリスなどの投稿サイトは、人気がある作品の作者には「本にして出版しませんか?」と言ってくれます。

 クライアント側が「これは売れそうだ」と思う作品を見つけて声をかけてくれるわけですが、作者が2冊目3冊目と出版していくためには、やはり「売れる作品」を書き続ける義務が発生します。


 私が売れる作品を書けるかどうかは横に置いておいても、「本当にそういうことをやりたいの?」と自身に尋ねたとき、私の心は首をかしげてしまいます。


 私は自分の生きがいとして小説を書いてきました。

 その間、私は収入がほしかったわけでも、小説家という肩書きがほしかったわけでもありませんでした。

 ただとにかく書けるのが楽しかったし、その作品を他の人も楽しんでくれるのが、なにより嬉しかったのです。

 その気持ちはシリーズを完成させた今でも変わりません。

 純粋だけれど、プロの小説家になる姿勢とは違っている気がします。


 結局、物書きとして、『カクヨム』や自サイトで無料で作品を公開していくやり方が、一番私に合っているんだろうな、という結論に落ち着きました。


 …………………………


 20年間の創作を振り返るエッセィ「20年間書き続けた私は小説家になれたのだろうか?」はこれでひとまず終了です。

 執筆しながら「これはどうなんだろう?」「他の作者さんたちはどうしているんだろう?」と思うことはいろいろあるので、そのうちにまた別エッセィを書くかもしれません。


『勇者フルート物語』は現在、第0巻「魔法の金の石」と第1巻「黒い霧の沼の戦い」を『カクヨム』で公開しています。

 第1巻は連載中ですが、以前投稿した日付が残っていて更新のお知らせが飛ばないので、第3章からもう一度投稿し直すことにしました。

 私自身が楽しみながら書いてきた物語です。

 一緒に物語の扉を開いて楽しんでいただけたら幸せです。


『勇者フルート物語・0』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894773666


『勇者フルート物語・1』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894966561






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