第10話 長編を読んでもらうための工夫

 第2話~5話で書いたとおり、私は長編体質です。

 今年完成させた『勇者フルート』もシリーズ全体を見ると大変な文字数です。


 ただ、長編は長編なりに、少しでも読みやすいようにと、いろいろ工夫してきました。

 今回はその工夫について書こうと思います。


 でも、その前に「今から小説を書くなら、読んでもらいやすいように、こうしたほうがいいと思うよ」というのを書いておきます。


 1.一文の文字数を少なめにする。(20文字~40文字程度)

 2.改行を頻繁ひんぱんにおこなう。

 3.読みやすいように適度に空白行を入れる。


 でも、『勇者フルート』はこれが成立していません。

 わかってはいるんですが、私がこれまで書いてきた文体と合致しないので……。


 私の文体は形容することばが多いです。

 それは物語のキャラクターや場面を頭の中に思い描いてほしいから。

 テンプレを使っていない分、描写する内容が多い、ということもあるかもしれません。

 ちょうど映画を撮影するときのカメラワークのように、地平線の左から右へ眺めていった景色を描写して、場所の広大さを感じてもらうとか、ぱっとその人を見たときにまず目に入る特徴から描写して、さらに細部を描くことで全体のイメージをつかんでもらうとか。

 長編の場合、物語の進行と共に登場人物が増えていくし、あるキャラクターが時間をおいてまた登場してくることもあるので、読んだ途端に「あっ、あの人ね!」とわかるように、個性的な特徴を作ることも意識しています。


 全体としては長編でも、1話1話はあまり長くしないように心掛けています。

 内容によりますが、1話2,500文字~4,500文字くらいで収まるのが目安です。

 たまに逸脱しますが。


 1巻ごとにひとつの読み物として読めるようにもしています。

 巻の冒頭で、それまでの大雑把な振り返りとキャラクターの説明をしているので、どの巻からでも読めるようになっています。

(でも、作者としては最初の巻から読んでもらうほうが嬉しいですが)


 シリーズものなので、巻ごとに起きる事件もがらっと変えています。

 だから、連載を追いかけてきた常連さんは「今度はどんなお話になるんだろう」と新しい巻のスタートを楽しみにしてくださっていたようです。

 シリーズの最終部分だけは3巻に渡って延々決戦になってしまいましたが、そこまではできるだけ違うテーマになるように意識していました。


 文章そのものも、できるだけ読みやすいように、リズムを意識して書いています。

 今書いているこの文章もそうですが、とんとんと先へ読むことができたら、長くてもあまり苦痛にならないのでは……と期待しています。

 私は作品の見直しもよくしますが、文章のリズムを整えるための修正が多いです。

 これについては、もっともっと巧くなりたい、と常に思っています。


 でも、これだけ工夫しても、長大であることに変わりはないので、長編と聞いただけで読みたくなくなる人は大勢います。

 こればかりは本当にどうしようもありません。

 試しに読んでみようか、と思う人がひとりでも現れてくれますように、と願うばかりです。



 次回は最終回。20年書き続けて私は小説家になれたのか──について考えます。








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