第4話 長編書きはつらいよ(読者編)

『勇者フルート』のシリーズより長い作品が『なろう』にありますよ、と読者様から教えていただきました。

 ありがとうございます。

 日本一長いネット小説じゃなくて、正直ほっとしました。

 なにしろ、長編体質にはデメリットを感じることのほうが多いので……。


 投稿サイトが充実する以前は、発表の場を見つけるのにとにかく苦労しました。

 これがひとつ目のデメリット。


 もうひとつの大きなデメリットは、もちろん「長編は読者から敬遠される」ということです。

「本編が28作、外伝が27作、トータルで700万文字以上の作品です」と言ったとき、「それは大作ですね。ぜひ読ませてください!」と言ってくださる神様のような読者はまずいません。

「それってどのくらい? 原稿用紙1万7千枚? うわ、すごいね」とは言ってくれますが、そのまま、さーっと後ずさりして離れていくのが感じられます。

 これは本当に昔からです。(苦笑)


 そして、現在は発表の場という点では恵まれていますが、読者という点では、ますます長編書きに厳しくなっているのです。


 以前、「長い長い」と言われる自分の作品を1巻まるごとプリントアウトしたことがあります。

 すると、枚数はそれなりにあるのに、意外なくらい読みやすくなって、自分でもびっくりしました。

 数えてみたら、普通サイズの新書1冊分くらいの文字量でした。

 確かに長いけれど、全然大長編じゃありません。


 もちろん、文字の大きさや行数、改行などによって状況は違うのですが、一般的に、一番読みやすいのは紙に印刷された文章です。

 次に文章が読みやすいのはパソコンやタブレットのような大きな画面。

 一番手軽に読めるけれど、一番読みにくいのはスマホの画面です。

 理由は簡単で、画面が狭くて視界に入ってくる情報が限られてしまうから。


 紙やパソコンに表示(紙の場合は印刷)された文章は、確かめたいことがあれば、視線を少し戻しただけですぐその情報を確かめられます。

 でも、スマホの場合、さっき読んだ情報は上へ送られて画面から消えてしまうので、その瞬間に確かめることはできません。

 スワイプでいちいち画面を戻すのも面倒だし、戻れば読んでいる内容が中断されるので、結果として「読みにくい」ということになります。


 現在はスマホで作品を読む方がとても増えました。

 だから、小説もスマホという媒体にあわせて、1行の文字数を少なく、台詞を多く、改行を頻繁ひんぱんにして、空白行もこまめに入れる、という工夫をして、狭い画面でも読みやすくしているようです。

 ラノベはそれが特に顕著けんちょですね。

 ラノベ読者は、ほとんどの方がスマホで作品を読んでいるからだと思います。


 一方、『勇者フルート』は、連載当初にスマホなど存在しなかったので、パソコンの画面に合わせて書いてきました。

 パソコンにはパソコンの読みにくさがあるので、表示幅や行間、改行などは工夫してきたし、スマホでも読めるように作品すべてをHTML5化する作業もしてきたのですが、スマホに特化していない分、やはり今の読者には読みにくい作品になってしまったのだろうと思います。

 スマホで長い作品を読むのも大変なことですし……。


 文章はその時代の主流になる媒体によって、表現スタイルが変わってきます。

 印刷した紙面で読む時代のスタイル、パソコンの画面で読む時代のスタイル、スマホの画面で読む現代のスタイル。それぞれが違います。

 そして、その変化はこの先の時代も続くのだろうと思います。


 今はスマホの小さい画面で文章を読む時代ですが、これからは折りたたみ式液晶スマホが広く普及して、タブレットサイズで文章を読む時代になるかもしれません。

 ひょっとしたら、小説をVRで楽しむ時代もやってくるかも。

 そのときには、映像として体感することを前提に、人物と舞台を設定し、台詞を書き、場面描写を書くようになるでしょう。

 小説は映画の脚本に近いものになるのかも……。


 次回は、どうして私は長編になるのかを考えてみます。







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