第3話 長編書きはつらいよ(発表の場編)

『勇者フルート』のシリーズが日本一長いネット小説かもしれないことは、前回書いたとおりですが、それ以前から私は長編体質でした。

 短編も書くのですが、書きやすいのはなんと言っても長編。原稿用紙で100枚以上になるのは当たり前で、『フルート』シリーズの中には原稿用紙千枚を超える巻もあります。

 この長編体質というのがくせ者で、発表するのにも読んでもらうのにも、本当に苦労させられるのです……。


 私が小説を本格的に書き始めた学生時代に、ネットはまだ存在しませんでした。

 小説を発表するには創作サークルに所属してサークル誌に発表するか、小説系雑誌のコンテストに応募して受賞掲載されるしか道がありません。ところが、どちらにも枚数制限があって、原稿用紙百枚超えの作品はまず受け付けてくれなかったのです。

 学生の間は手書きの原稿を友人やサークルの間で回覧して、感想をもらっていました。


 その後、コミケが火付け役となって同人誌ブームが到来。私も『探偵アップル事件簿 ウンディーネ』というミステリーを104ページの同人誌にして、友人に委託してコミケ販売しました。

 実際に自分で本を出したことがある方は、すぐにぴんとくると思いますが、このページ数の同人誌を作ると、相当な料金を印刷所に支払うことになります。

 読者からの評判は悪くなかったのですが、思ったようには売れなかったし貯金も尽きてしまったので、同人誌で小説を発表することはあきらめました。


 だけど、読んでほしい。

 私は物語を書きたいし、それを読んで楽しんでもらいたい。


 その一心で始めたのが、自分の作品を発表するサイトの作成でした。

 パソコンなんてまったくの初心者。

 知識も技術もなかったけれど、HTMLファイルの作り方を経験者に教えてもらったりネットで調べたりしながら、「アサクラ私立図書館」というサイトを立ち上げて、やっと自分の作品を発表する場所を手に入れました。


 ちなみに、その当時にも小説投稿サイトを個人で立ち上げている人はいました。

 ところが、登録して『勇者フルート』を連載しようとしたら、数回で「あなたの作品は長すぎてうちのサイトには向きません」と出禁を食らいました。

 個人のサイトではサーバーに限界があったのだと、今ならわかるのですが、当時はやっぱりつらかったです。


 今は、長編書きさんにも『カクヨム』や『なろう』などの発表の場があります。

「どんな長編でもOK! 安心して投稿してね!」と言ってくれているんですから、本当に太っ腹です。

 今は物書きさんに本当に幸せな時代だと思います。


 次回は、「長編書きはつらいよ」(読者編)です。












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