第4話「エラーメッセージ」が出る件について

 こんなことがありました。

 お菓子を容器に入れてテープで止める、という作業をしていました。そこにあったハサミの切れ味が悪かったので、「ハサミを取り替えてきます」と断って、別のハサミを持ってきました。


 オーナーさんが言いました。

「西さん。最初に教えましたよね。テープを切るハサミは、あっち側の黄色のハサミだと。いい加減、覚えてください」


 いいえ、違います。

 そのとき教えてもらったのは、「リボンを切るハサミはオレンジので、これでテープは切らないでください」でした。

 わたしが持って来たハサミについては、何一つ言われていません。そして、周りの人もこれでテープ切っています。なぜなら、黄色のハサミは切れ味が悪くてうまく切れないからです。


 わたしは「はい、すみませんでした」と応えました。

 こういうとき、エラーメッセージが出るのです。「おかしいよ、そんなこと言われていないよ」って。でも、それを主張したところで「いいえ言いました」と言うに決まっているので、主張しません。却って怒られるから。


 最近気づいたのは、オーナーさんの記憶力が悪いということ。

 そして、間違えたのは全部わたしのせいになっているということ。

「わたしじゃありません」と思っても、思いこんでいる人に言っても無意味です。


 クリスマスケーキの予約の時期です。

 予約の仕方を教えてもらったので、予約を受けました。


「西さん! 注文受けないでください! 出来ないんだから!」

「西さん、余計なこと、しないでください!」

「西さんは裏で、箱折り(内職)とか、そういうことをしてください」


 そうオーナーさんに言われたので、あるとき箱折り(内職)をしようと思いました。

 やり始めたところで、古参のHさんに言われました。

「内職は、こっちが終わってから。内職やらないで」

 お店に呼ばれました。足りない焼き菓子などを補充しました。

「クリスマスケーキの予約、ちゃんと受けて」と、Hさんに言われました。受けました。ポイントカードの件以外はだいたい出来ました。

「ポイントは大事だから、間違えないで」


 一番大事なのは、ケーキの注文を間違えないことだと思っていたのですが、違うようです。まあ「ポイント三倍となっています」と数字を言わなくちゃいけないのを忘れただけです。でも、「だけ」じゃないらしいです。

 もちろん、マニュアルはありません。


 わたしはクリスマスケーキの予約を受けていいのかいけないのか。

 よく分かりません。

 こないだはオーナーさんにも言われました。

「西さん、内職はいいから、クリスマスケーキの予約を受けて!」


 よく分かりませんが、受けました。

 特段間違えた覚えはないけど、「出来ていない」らしいです。

 何がいけないのかはよく分かりません。

「西さんは仕事を覚えない。いつまで経っても出来るようにならない。みんなの迷惑だ」と抽象論で言われるだけなので。


 エラーメッセージが常に点灯しているから出来ないんですよ?


 たぶん、わたしが、空気が読めないことが原因なんです。

 オーナーさんの気持ちは日々変化します。そういうのを汲み取って仕事をすべきなのです。また、オーナーさんとHさんのバランスも、空気を読んでやらねばなりません。


 ASD(アスペルガー)だから、無理です。

 ちゃんと言ってくれないと。


 何をしていいのか分からない。


 これが素直な感想で、そしてわたしの中では、いつもエラーメッセージが出ている状態なんです。

 



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