第2話「見て覚えて」が無理な件について

 最近「ふつうにやって」と言われていますが、最初からずっと言われているのは「見て覚えて」です。

 膨大な量のことを「見て覚えて」。

 ……どうやって? みんな天才なの? みんな映像記憶持っているの?

 と、ずっと心の中でつぶやいておりました。


「見て覚えて」

 すみません、覚えられません。

 とにかく、ケーキの詰め方だけで、膨大な組み合わせがあるのです。ケーキの種類は20以上ある上に、新作も出てきます。新作が出て来ても、初めて見るそのケーキの詰め方は教えられません。特殊な箱の置き場も教えられません。「見えて覚える」らしいです。謎です。


 ちなみに、ケーキだけでも種類が多いのに、袋の種類もたくさんあります。

 これも、人によって入れ方が異なるんです。

 一番困るのは、オーナーさんと古参のパートHさんの入れ方が異なること。

 オーナーさんのやり方でやると、厳しく目を光らせていたHさんに怒られ、Hさんのやり方でやると、厳しく目を光らせていたオーナーさんに怒られます。

 だから、オーナーさんがいるときはオーナーさんの、HさんがいるときはHさんのやり方でやっています。

 ……もちろん、全てはうまく行きません。


「見て覚えて」

 バージョンが多すぎるので無理です。

 ケーキの種類も袋の種類も多い上に、その人ごとのやり方を覚えないと怒られます。

 

 みなさん、天才なんですね!

(うっかり発言しないよう、気をつけます。)


 ところで、言葉の定義も困難です。お店でしか使用しない、Aという言葉あったとします。

「Aってどういう意味なんですか?」

「AはAです」

 意味が分かりません。


 たぶん、そういう、お店独自の言語も「見て覚えて」なんでしょう。

 無理です。

 

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