泉の妖精
@ryokuminn
第1話 少年エディス①
少女は歌う”Exucri con-exucri Glion. Aisus scrisumio uelor,Exucri con-exucri Glion. Aisus scrisumio uelor..." 虹色の夜、誰にも忘れ去られたような緑と金色の泉のほとりで、水面に何かがしたたり落ちたかのように....
ケルトの諸部族ガリア人とローマ人との戦いが終わり数十年、悠然たるセクアナ川のほとり、ガリア人の村の少年・エディスは、さして大きな被害を受けることのなかったこの地で月並みの生活を送る若者である。エディスの家は代々名剣で有名な鍛冶屋を営んでおり、特に彼の鍛錬した剣はとても評判がよく村の外からも旅人が訪ねてくるほどだ。彼は今日の日も、父の手伝いで外注のあったローマの剣・グラディウスの材料を集めるため、村の中心部に出かけてきた。郊外に比べ人通りの多い街に目を輝かせていると、
「エディス!久しぶりね。今日もお父さんの手伝い?」
エディスの幼馴染であり、婚約者でもある村娘・ユーリアが不意に声をかける。
「ああ。なんでもお偉いさんからグラディウスの注文が入ったみたいでね。
父さんはいつもの通り面倒だからって鉄集めは俺に任せたって。まいっちゃうよ。」
エディスは少し驚いたあとけだるそうに言った。
「あら、そう?さっきまで楽しそうに歩いていたけどね。やっぱりエディスはいつ見ても変わらないね。安心安心。」
ユーリアは笑みを浮かべて言った。二人はつい一週間前にも会ったはずなのに、まるで数年ぶりの再会を果たしたかのように話に花を咲かせた。先ほどから少しローマという言葉が出てきているが、それといえばこの娘、ユーリアという名前である。ユーリアという名前はガリア人ではなくローマ人の女性の名前であるが、彼女は噂にはなんとあの高名なローマの英雄・ユリウス=カエサルのガリアに残した子孫だというのだ。それはさておき、ユーリアは、
「そういえば、今日この村の西はずれに遠いケルトの商人が来ると聞いたわ。
もしかしたら鉄も売っているかも。行ってみたらどう?」という。
それを聞いたエディスはそこに行ってみようと決め、二人は軽い挨拶をして別れた。
泉の妖精 @ryokuminn
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