この世で私1人だけ

妃 妙

第1話



私が知らないのであれば誰も知らないのよ。

その笑顔の意味は、世界中でただの1人も。

私以外は。






ずっと好きだった人がいる。

所謂初恋で、幼馴染ってやつで、十何年も想い続けてた。


何年も共にいれば彼も周りも私の気持ちには気づいていて、でもそれに応えることはなかった。


けれどそれが苦ではなかったのだ。

勿論、友達以上になれたなら幸せだと、そうなりたいと何度も願ったけれど、そうでなくても自分は特別だと感じていたんだ。

今のままでいい。いつか私の気持ちに応えてくれればいい。

私にとっては、私が彼を好きだという事実だけが大事だった。


それでよかったのに。




私はあの角が嫌いだった。

あの、緑のポールが立っているあの場所。


彼と私の分かれ道


振り返ればいつも見えるのはその背中。


けれど、最近は違うんだ。


いつものように振り返る、そしてズキリと、心臓が痛む。


初めて見たのだ。緑のポールの向こう側、貴方の横顔。その笑顔。

何年も何年も貴方を見てきた、貴方だけを。


だけど見たことない。そんな顔は初めて見た。


きっと、その意味を知らない。世界中の誰も。ただの1人も。


それを向けられているあの子も、そして、貴方自身も。


貴方を見つめてる私以外は誰もわからない。その笑顔の意味を。


貴方はあの子に、恋をしている。


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この世で私1人だけ 妃 妙 @kisaki_tae

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