第16話 side 琴葉7
時は少し戻って、遥が気絶するように寝てしまった頃。
「先輩寝ちゃったけど、どうしよう…。」
私は先輩の寝顔を眺めつつこの後の予定を考えていた。
「とりあえず…1回家に戻って着替えて来よ。そしたら朝ご飯の用意をして…。」
あれこれと考え事をしつつ部屋へと戻り着替えを始める。
厚手のタイツを履きその上からショートパンツ。そして、オーバーサイズのパーカーを着る。ゆったりとした服装が好きな私はオーバーサイズの服をよく買う。
「これでよしっと。先輩の部屋に戻ってあかの用意しないと。」
マイエプロンを持ち先輩の部屋に戻る。
今日の朝ご飯はフレンチトーストの予定なので、卵液を作りそこに食パンを浸しておく。後は先輩が起きたら焼けば問題ない。
用意自体は慣れていることもありササッと終わってしまい手持ち無沙汰になってしまった。
「何しようかなぁ…。」
私はまた先輩の幸せそうな寝顔を見つつどうするか悩んでいた。
「膝枕したら先輩…喜んでくれるかな…」
そう呟いた私は先輩の頭を持ち上げ自分の腿の上に乗せた。そして、無意識に先輩の頭を撫でていた。
どれくらいの時間そうしていただろうか…先輩が「んぅ…」と声を漏らし、徐々に目を開き始めたのを確認し撫でる手を止めた。
私と目が合うと、吃りながらも謝罪の言葉を口にし、すぐに退こうとする先輩をやんわりと押しとどめ、自分が好きでやっている事を伝えた。
私の膝枕で顔を真っ赤にしてアワアワしてる先輩はとても可愛かった。
◇
お昼になってしまった朝ご飯を食べ終えた私達は、期末テストが近い事もありテスト勉強をする事にした。
自分の部屋へ勉強道具を取りに行き戻って来ると、遥先輩が「おかえり」と言って出迎えてくれた。
びっくりしてしまったが何とか「ただいま」と返す事が出来た。
今まで「いってらっしゃい」も「おかえり」も言ってくれる人なんて居なかったから。
遥先輩が「おかえり」と言ってくれた時、心がとても暖かくなった。
ご機嫌になっていた私は先輩に一つお願いをした。
テストの成績が良かったらご褒美が欲しいと。
両親の気を引こうと必死だった事もあり、もともと成績はそんなに悪くない。
ただ、もうそれも無理なんだと少し気落ちしていたのでモチベーションを上げるためにお願いをしたのだ。
勉強を始め1時間程経った頃。
少し飲み物でも飲もうかと思い顔を上げた。
私は集中して勉強する先輩の真剣な表情に見蕩れてしまった。
ボーッとしてしまっていると、先輩も丁度休憩しようと思ったらしく顔を上げた。
ペンを置き、先輩のいれてくれたコーヒーを飲みながら少し休憩をする。
先輩が何故一人暮らしをしているのかも教えて貰えた。
私達の年齢で一人暮らしと言うのは、私のような特殊な例を除くと珍しいと思う。
それこそ女の子の一人暮らしなんて、ご両親も心配だろう。
だからこそ、学校からも程よい近さでセキュリティのしっかりしたこのマンションに住んで居るのだろう。
コーヒーを飲み終えた私達はそのまま雑談をしつつ勉強を続けた。
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