第11話 side 琴葉5
先輩に連れられリビングへ向かう。
すると先輩が「何か温かいの飲む?」と聞いてきたので、「いただきます!」と答えた。
外に居た時間が少し長く冷えてしまったのである。
「じゃあ、ココアかホットミルクどっちがいい?」
「ココアで」
「うん!じゃあまた座って待ってて!」
待っててと言われたので、先程も座っていたソファに腰掛ける。
ソファからキッチンの方を見ると先輩はしゃがんでいるのか姿が見えなかった。
物を取るだけならすぐに立ち上がって姿が見えるだろうと思っていた琴葉は、なかなか姿が見えない遥が心配になり様子を見に行くことにした。
キッチンへ行くとしゃがみ込み何かを呟く先輩の姿。そんな先輩へ私は声をかけた。
「せ、先輩…大丈夫ですか?」
「うぇーい!だ、大丈ん"っ"!!!!!」
先輩はちょっと変な声を上げながら、立ち上がりこちらに振り返った。
しかし、慌てていたのか勢いよくターンした先輩の脚は見事に冷蔵庫に直撃。
それを見た私は「あ…痛そう…。」と呑気に考えていた。バランス崩し倒れそうになっている先輩を見るまでは。
それに気付いた私は、先輩を支えようとして近付いた。そしてこちらへ倒れてくる先輩。スローモーションになったかのような不思議な感覚。先輩を受け止めた…ように思えた私。先輩より背も低く体重も軽い私に先輩を支える事は出来ず、二人揃って倒れてしまった。
「きゃっ…///」
「んっ…!!!」
「せ、先輩!大丈夫ですか!?」
「う、うん…なんとか…。
琴葉ちゃんも大丈夫?」
「私は大丈夫です…。で、でもこの体勢はちょっとは、恥ずかし…です」
そう、私は今先輩に押し倒されたかのような体勢になり、胸の上には先輩のお顔が…。
「ご、ごめん!!!すぐ退くね!?」
そう言うと先輩はすぐに私の上から退いてしまった。
「あっ……」
(もう少し居てくれても良かったのに…。私も先輩の事ギュッて抱きしめたかったな…。)
「…?大丈夫?」
「は、はい!」
「あ、コ、ココア急いで作るね!すぐ持っていくから向こうで待ってて!」
「は、はい」
先輩が心配して少し顔を近付けた為、恥ずかしくなってしまい、先輩に言われた通りソファへとそそくさと移動した。
先輩はすぐにマグカップを二つ持って来た。
マグカップをテーブルに置き、ソファへ腰掛ける先輩。しかしそこには微妙な距離があった。
そこに寂しさを覚えた私は先輩に気取られないように距離を詰めた。
そしてココアを一口飲み、声を掛けられたのでマグカップをテーブルに戻してから先輩の方へ顔を向ける
すると顔を真っ赤に染めた先輩が!
「先輩、お顔真っ赤ですけど大丈夫ですか?もしかして、私のせいで風邪引いちゃいました!?」
「んっ!?大丈夫だよ!全然元気だよ!ほらっ!」
そう言って急に立ち上がる先輩。
その動作に既視感を覚える私。
そして予想通り先輩はバランスを崩し、私の方へ倒れ込んでくる。
あまりにも予想通りで逆に動けなくなってしまった私。
「「きゃっ……///」」
(はっ!何ボサっとしてるの私!先輩をちゃんと支えなきゃ!って、待って!先輩の顔近っ!睫毛長っ!肌超綺麗!えっ!これちょっと動いたらキス出来るんじゃ!?)
そんな事を考えていると先輩と目が合った。
しかしそれは一瞬で、先輩はすぐに私の上から退くと謝罪を繰り返すのだった。
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