第10話 side 琴葉4

 先輩の部屋へ泊まることになった私は、着替えをする為に1度自分の部屋へ戻ることにした。

 それを伝えると先輩は「私もお風呂へ入るから!出たら連絡するからそしたらまた来て!」と言い、わたしを玄関まで見送ってくれた。


 自分の部屋へ戻り、玄関に放置されていた鞄を持ってリビングに。

 最低限の物以外何も無い無機室な部屋。

 先程までの夢の中に居るようなふわふわとした気持ちが、急に現実へと引き戻される。

 ひとまず鞄をテーブルの上に置き、今日出された課題等を確認する。

 その後は寝室へ行き、タンスから下着やネグリジェを取り出し着替える。


「せ、先輩の家にお泊まりするんだしオシャレなやつにしないとね!」


 何故か見せる訳でもないのに、普段は着けないちょっとオシャレな下着つける。



 着替え終わった私は先程まで自分が着ていた先輩の服に顔を近付ける。

 仄かに香る先輩の匂い。そしてそこに溶け込む自分の匂い。

 そして深呼吸を一つ。


 変態である。


「で、でも落ち着くんだからしょうがないよね!」


 そう誰に聞かせるでも無い言い訳を言い、もう一度深呼吸をする私。


「やっぱり…凄く落ち着く…。なんでだろ?」


 自分でも何故なのか全く分からないが、先輩の匂いを嗅いでいるととても落ち着くのだ。


「で、でもこんな事やってるのバレたら先輩に嫌われちゃうよね…」


 そう言いつつも匂いを嗅ぐのをやめられない私。


「私って匂いフェチだったのかな…。

 とりあえずこれは先輩にバレないようにしないと…。そう言えば先輩の胸柔らかかったな…。すぅ…はぁ…すぅ…はぁ…。んっ///」


 先輩の服を片手にその匂いを嗅ぎつつ、無意識に空いたもう片方の手で自分の股や胸に触れる。


「んっ///んぅ///すぅ…はぁ…んっ///

 せん…ぱい…///すぅ…はぁ…///せん…ぱい…すき…すき///」



(んっ!?な、な、な、何やってるの私!?)


 突然我に返った琴葉はキッチンへ向かい、戸棚から袋タイプのジップロックを取り出すと、遥の服をそのジップロックにしまい、そっとタンスに仕舞うのであった。そうするのが当然であるかのように。

 しかし、やっている事は完全に変態のそれである。


「先輩の服は後でちゃんと洗濯するとして、先輩の家に行く用意をしないと」


 そう呟いた私は、スマホを持ち厚手の上着を羽織り外に出た。ナニでとは言えないが火照ってしまった身体を冷やす為。


「寒っ…」


 そして先輩の部屋のドアの前で、先輩からのL〇NEを今か今かと待ち構えるのであった。


 ピコンッ!


「来たっ!先輩からのL〇NE!」


 そこからの動きはとても早かった。

 流れるような動作でインターホンを押す。

 すると玄関の近くに居たのか、先輩はすぐに玄関扉を開けてくれた。

 迎え入れてくれた先輩の顔はお風呂上がりだからなのか、少し赤く染っていた。


「ど、どうぞ…上がって…」

「はい!お邪魔します!」

「待たせちゃってごめんね?」

「ぜ、全然大丈夫です!」


 そうして、先輩の部屋へ再度お邪魔するのであった。

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