心の絆創膏
@ayausagi
第1話
「好きです!!」
2月14日、バレンタインに街が色づく日、私は大好きな人に思いを告げた。
「えっいや普通に無理なんだけど」
バッサリと振られ嘲笑をしながら教室を出て行っていた。好きだった笑い声が遠ざかり異様な静けさが訪れる。私は振られた事と告白をバカにされたショックでその場から動けなかった。
「彩華?」
名前を呼ばれ振り返ると同じ部活の伸二先輩が扉の影から顔を覗かせていた。
「せ、先輩……どうしました?」
「いや、向こうから彩華の姿見えて立ち尽くとるから心配でな。なぁ……寄り道して帰らん?」
ニッコリと笑いながら差し出された手を握る。彼から伝わる温もりでゆっくりと時間が動きだした。
「俺、ここ来てみたくてさ。でもひとりじゃ入りずらくて来れなかったんだよね。」
店員さんから出されたお冷をクルクル回しながらメニュー越しに私を見つめていた。
「好きなの頼み?」
「じゃあ、このパフェとココア」
「りょーかい。店員さんすみません。これとこれあとパンケーキとアイスコーヒーひとつで」
それからいっぱい話をした。伸二先輩はゆっくりと頷きながら笑ってくれた。彼がコーヒーに手を伸ばし少しの沈黙が生まれる。少し目を伏せた彼があの人が重なった。あの人ともこうやって過ごしたかった……また、さっきの嘲笑った顔が浮かぶ。
「彩華、ねぇ大丈夫?」
優しい声で名前を呼ばれる。彼は困った顔をして私を見つめていた。
「これ、すごく美味しいです!!」
ちゃんと笑えてるだろうかあなたの顔が見れない……あいつと重なるから……
喉奥の熱いものを冷やすようにココアを流し込んだ。
カフェから出るとすっかり暗くなっていた。
「今日はありがとうございました。私こっちなので」
「暗くなってるから送るよ。」
一緒に駅に向かう途中に私を振ったあいつが見えた。隣には今日の為に準備されたであろう小さな紙袋を持った女子が嬉しそうな顔で寄り添っていた。思わず固まっていると先輩に引き止められる。
「先輩?どうしました?」
「あいつに振られたんやろ。」
「えっ……」
体が鉛のように重くなっていく。やめて……そんな顔で私を見ないでせめて最後まで楽しい気持ちで終わらせて
「聞くつもりはなかったんやけど聞こえてさ。」
手を引かれ彼の胸に収まる。いままで感じた事のない安心感に思わず涙が溢れてしまった。
「私、本気で好きで……頑張って思い伝えたんです!!なのに…笑われて悔しくて」
「なぁ……こんな時に言ってええかわからないんだけど。俺と付き合って欲しい。絶対に悲しませないから。」
「いいんですか?私で……もしかしたら伸二先輩をちゃんと愛せないかもしれないのに」
「俺が愛す……あいつを忘れさせるくらい。本気で愛すから。だから俺の大切な人になって」
これは心を埋めるだけの物語。
心の絆創膏 @ayausagi
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