雨音に君を想う
@ayausagi
第1話
【雨音】
薄暗い部屋で目覚める。窓に当たって流れゆく微かな雨粒の音でもうるさく感じる。いつからだろう僕がこんなになったのは昔はこんな音気にならない明るい部屋だったのにそこらかしこに散らばる光の点は君が居なければ繋がらない他の人ではなく君でなければ
重い体を起こし彼女の写真とその横に置かれた指輪に手を合わせる写真の中で笑う彼女は本当に幸せそうで僕があげた指輪がキラリと光っている本当は僕も付けて一緒に歩いてるはずなのに僕の横にあるのは冷たい空気だけ
「ごめん。君を置いて幸せにはなれないんだよ。」
もしかしたら君は初めから居なかったのかもしれないすべては僕の夢、きっとそうなんだそう自分に言い聞かせても君の手の温もり、優しい声が帰ってくる。
相変わらずうるさい雨は僕をあの日へ戻す。君を忘れさせないために降る雨に震えていると家のインターホンがなるドアを開けるとレジ袋を持った幼なじみが立っていた
「なに?」
「なに?じゃないよ。連絡してもでないから心配して来たんだけど」
「あぁ、ありがとう…」
袋を受け取りドアを閉める前に止められた
「作ってあげるからあがらせて」
キッチンで準備をするあいつが彼女と重なって柔らかい光で包んでゆく。わかっているおまえが俺を好きだってこともそれに気づかぬ振りをしている俺のことも。知っているあなたが私にあの子の姿を重ねて見ていることにそして私に振り向かないこともそれでもいい私があなたの心の支えになるのなら
「できたよ。」
「ありがとう。」
「美味しそうに食べるね。」
「美味しいんだから当たり前だろ?」
笑顔で私の手を握る彼の涙は頬を伝って私の手に落ちた。この雨は止むことのないその雨からあなたを守れるなら偽の傘になってもいいだから
「もういいよ。一人で抱えないでいいんだよ。」
「ごめん…本当にごめん。」
背中を丸め泣く彼を抱きしめる。いい大人が一人の女のために震えながら泣き崩れる姿はどれほど彼女が愛されていたのかを語っていた
「もう居ないのはわかってる。会えないことも理解してるのに認めてしまうと彼女を忘れて生きることになる。そんな事出来るわけないじゃないか!!」
「頼ってよ…あなたが望むなら私はそばに居るから」
乾いた笑い声と共に顔を撫でられた
「本当におまえは優しいな。気使わせてごめんな。飯うまかった、ありがとう。外雨降ってるから気をつけて帰れよ」
玄関まで見送られ外に出る。静かに降る雨は明日も続くもし晴れるのなら彼の心まで届けたい私の気持ちと共に…
送り出した後の部屋は冷えきり先程で使われていたキッチンの水音が僕の心を追い詰める。君を想う雨が止み新たな陽が射した時僕は変われるのだろうか…
❦ℯꫛᎴ❧
雨音に君を想う @ayausagi
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