第2話 あのこのとなり
魔界創世以来最強と謳われた父と、圧倒的美とカリスマ性で魔界中の男を虜にした母から生まれたロックス。
当然魔力も二人を掛け合わせたレベルで備え、母からはその美貌も余すところなく受け継いだ。
銀色のロングヘアーに、無駄な肉の一切ない引き締まった身体。魅力的なのはその瞳だ。
黒々とした眼球は魔物の特徴。けれどロックスは、そのなかに煌々と輝く月のような、美しい金色の瞳を待っていた。
見入っているうちに、真帆はなんだかくらくらしてくる。
(ロックスって、ほんとに綺麗だな)
真帆の父は二十年前、イセカイというところから王命で召喚されたらしい。魔力を手にしたその瞬間から他の魔導士の追随など一切許さない圧倒的才能で、救った国も数知れず。母はその旅の道中で知り合った王女で、世界創造の三柱のうち「癒しの神」であるサゥリエルの血を引いていた。
おかげで、真帆に癒せない傷は一つもない。病や老いも然りだと、知っている者は一握りだ。
この内から溢れる神聖さは、真帆の愛らしさに、慈愛に満ちた瞳に、まどろむような声に現れた。
真帆の隣にいるだけで、ロックスは胸のなかに陽だまりを抱えているような心地よさを感じるのだ。
(真帆って、マジで綺麗だな)
私が隣にいてもいいのかな。
とかは別に思わない。
(だってこいつの横に並んでも恥ずかしくないやつとか)
(世界中探しても私くらいのもんじゃない?)
魔王と勇者の娘が家出して一緒に逃避行する話 岡田遥@書籍発売中 @oop810
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