キャラクターをアイコン化する

(私の)キャラクター作りの工程について

 あくまで「私の」キャラクター作りの方法論です。


 自己紹介でも言ってますが、私は無冠ですし何らかの受賞実績もありません。執筆歴だけムダに長いただの人です。ただ、作ってきた物語、書き続けた期間に於いては、そんじょそこらの人には負けません。ので、その中であれこれ試行錯誤して確立(←今のところ)したキャラクター作りについてちょびっと語ります。


 まず、キャラクターは「で表現し得る」事が大事だと思います。これを「アイコン化」なんて言ったりもします。アイコンよろしく「一目で認識できる」ようにするっていう話ですね。


 たとえば拙作「腰痛剣士と肩凝り魔女」に於ける主人公「エリさん」は、ズバリ一言で「」です。エリさんを表現するのにこれ以上のものはありません。そもそも作品タイトルが「腰痛剣士と肩凝り魔女」ですから、まぁそうなるな、です。



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 以後、この「エリさん」を基本に話をします。

 出典・参考にしてください:https://kakuyomu.jp/works/16817330667806787552


 本作の原型とも言えるversion1.0はかつてカクヨムコンで読者選考を突破した作品です。カクヨムコン6だったかな? 5だったかも? キャラ人気はすごかったんですよ(笑) 主にヒロインの「タナさん」でしたけど、主人公の「エリさん」も個性が立ってるってんで。

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 ではまず一言で:

 『エリさんとは、である』 ……A is B で表すことが大事です。

 年齢だの身長だのはその後です。


 というわけで色々決めていきましょう。

 何から決めるかは作品による、というわけなのですが、ここでは主人公の「年齢」を決めちゃいます。


 「過去に色々あった」

 「腰痛」

 「大人っぽくなんか言わせたい」


 この辺の要素が集まると「若い人」にはなりません。若くても腰痛にはなりますが、デスクワーカーとかでもない限り、基本的には中年以上の病であると考えられます。かと言って「老人」で「腰痛」だと普通過ぎてつまらない。「剣士」を活かすのも難しい。読者もおいてきぼりです。


 となると間を取ることになります。30代がいい所かな? みたいな。


 「過去に色々あった」ことにしたいし、「大人っぽいセリフを言わせたい」ってことを考えると、三十代後半がいいなということになります。欲を言えば40代前半なのですが、読者層からあまりにも乖離すると意味がないので、アラフォー前半にとどめました。結論から言うと37歳です。


 ここにきて「過去に何があった?」という掘り下げになります。前の記事の「プロット」で語ってるキャラクターの掘り下げに該当します。ここで「何があった」かを語ると盛大なネタバレになるので省略します。ただ彼、20年前にてそれ以来流浪るろうの身になっています。20年間世の中さまよい歩いているわけですね。で、腰痛になってしまった(腰痛の原因は色々あるんだけど、まぁここではそういうことにしておく)


 また、過去の事件だけでは弱いので「出自」についても決めます。これも盛大なネタバレになるので伏せますが、こうこうこういう生まれで、こういう幼少期で、青年期はこう、みたいなのを決めちゃいます。そして20年前の大事件と。


 こうなってくるとあとは多くの作者さんはスルスル連想ゲームのようにキャラクターを作れるようになると思います。エリさんは20年前の大事件以後、ずっとの意識を背負っているんですが、そのためにある意味人生諦観しているところがある。目的もなく生きているっていう感じで。


 ただし「感覚」は割と一般人で、読者との親和性・共感性を高くするように設定しました。


 たとえば、魔女狩りと称して幼女(ハーフエルフですが)を狩りに来た連中を返り討ちにして、追い散らした際にエリさんは言います。(あ、このときもエリさんは棒立ちです。腰が痛いので)


「タナさん、ああいう連中はもっと痛めつけといたほうが良いんじゃないのか?」


 エリさん的には「幼女に暴行を働こうってやつなんざぶっ殺しちまえ」って思うわけです。とても一般的な感覚の持ち主です。


 ここまではパーソナリティの部分ですね。

 書きませんけど、37歳(ファンタジーの世界なのでリアルワールドでは+5歳されると見てください)ならではの大人のセリフ、掛け合いなどがあったりします。それを書きたいから37歳です。


 そして年齢が決まったところでふたたび「腰痛」に戻ります。


 腰痛だと何が起きるか。

 →戦えない、走れない、馬に乗れない、鎧を着れない

 →→剣士?


 つまり、「腰痛剣士」ってのはそれだけで撞着どうちゃく語になっているわけです。みたいな一見チグハグな要素が組み合わさっている状態ですね。


 「腰痛なのに剣士が務まるのかよ!」って思うじゃないですか。普通なら「腰痛なりに頑張って剣士をやる」とかになると思いますよね。しかし私は天邪鬼。普通がそうなら反対を行こうという逆張り人生です。つまり答えはこうです。


 「腰痛なのに剣士だけど」――だって腰痛ですよ? 腰痛の人はわかると思いますけど、その腰痛が慢性化しているのに(あまつさえ走れない程なのに)、数キロある長剣を使えると思いますか? 使えませんよね。なので「腰痛だから戦えない。けど剣を持ってるから剣士」ってことになります。


 じゃぁ、「なんで剣持ってるのよ、使えないのに」ってなりますよね。そこで考えます。「剣に特別な意味をもたせればいいじゃん」とかそう言う具合に、この辺も盛大にネタバレになるのであまり書けませんが、「フツーじゃない剣」ってことにすればいいんじゃね? という話です。まぁ、ガルンシュバーグっていう立派な名前のある名剣なわけですが、この剣の曰くったらそりゃもう。


 ヒロインの「タナさん」にはほぼ初対面にして「そんじょそこらの剣士が身につけられるような武器じゃない」って見抜かれているんですけどね。


 しかし「剣は使えない」って前提があるので、エリさんにとってはこの長剣は「杖」なわけです。杖。


 これで「杖代わりにちょうどいいからそのまま持って歩いてる」っていう理由ができました。


 これでエリさんには「腰痛の剣士」「剣は杖」「戦えない」という定義が付きました。


 この場合、エリさんは「イケメン」がいいのか「フツメン」がいいのか「ブサイク」がいいのかって話になります。最後のはビジュアル的に美味しくないので却下。じゃぁ、イケメン or フツメンになりますが、「腰痛剣士」がイケメンだったらて何がなんだか分からなくなります。ので、ヒロインの「タナさん」には「顔以外はいい男」とか言わせてます。エリさんも「気にしてるのに!」って返したりしますので、エリさんは客観的にも主観的にもイケメンじゃないってことになります。


 つまり、【エリさん=腰痛剣士】というところを徹底的に守るキャラメイクをした、ということになります。


 ココまででできた「エリさん」をまとめてみると……


 ★腰痛の剣士

 ・戦えない

 ・剣を持ってるけど杖

 ・頑張れない(腰)

 ・おっさん(37歳)

 ・フツメン


 というとになります。金髪碧眼だったりしますし、なにげに大柄だったりするんですが、その辺は「腰痛剣士」を前に出したいのでだけ。可能な限り属性を抑え、途中で彼のがばーんと明かされた時に「mjsk」ってなるように仕込んでいます。


 ここからさらにキャラクターを広げます。

 注目すべきは「おっさん(37歳)」です。37歳を決める時にいくつか要素がありましたよね。そこから広げていきます。――おっさん言うても私(作者)より10近く若いんですから、自分でも37歳をおっさんと呼ぶのは抵抗がありますが、ここではさておく……。


 「エリさん」は基本的にを持たせているので(出自がゴニョゴニョだけど20年の放浪生活があるので)、かつ、「いい人」であってほしいので(その過去からも)、こんな属性を載せました。


 ・女性と子どもに優しい

 ・悪いやつには厳しい

 ・女子の買い物をニコニコと見ていられるパーソナリティ

 ・言いたいことはスパッと言う

 ・嫁(タナさんは厳密には嫁ではないけど)には弱い

 ・あまり前に出るタイプではないが決める所は決める(腰痛を押してでも)

 ・必要以上に強がらない

 ・大事なものを守るためなら危険を厭わないガッツ


 どうです、(身近な感じの)っぽいでしょう。

 実際にエリさん、こんな感じで動きます。


 ただし、「腰痛」が全てをにします――というオチが毎回ついて回ることにしました。


 キャラクターの仔細はここからさらに掘り下げるのですが、重要なパーソナリティ、行動原理の源泉などは、こんな感じで作られたというわけです。


 キャラクターによってアプローチは当然違ってきますが、一例としてはこんな感じです。


■宣伝―――――

「腰痛剣士と肩凝り魔女」

https://kakuyomu.jp/works/16817330667806787552

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