第2話「戦いの中で」
私達は着々と冒険を重ねていった。気づけば二月程で中級依頼を任せられるほどに。
意外とパーティの思考は堅実で、一つひとつ着実に、油断せず、時には戦略的に撤退することもしていた。優秀な人達。
(すごいな…)
ルーカスは新しい剣技を身につけ、ガイマンは鎧に防御強化魔法を施し、ファスカは次々と強力な攻撃魔法を習得していった。
私は、ひたすら回復。解毒に、鎮痛に、治癒。たまにアンデット浄化。
「私は何か変わっているのでしょうか。成長、できているのでしょうか」
ある日、野営地での夜食が終わった時に私は思わず口に出てしまったのです。
「自分の成長って、自分じゃ分からないもんだと思う。出会った時より、回復の速さも回復できる範囲も桁違いだと思うぞ?」
「うむ。我も数日前にポイズンスライムの毒が鎧の隙間から染み込んでしまった時、隙間を狙って瞬時に生身を回復したではないか。」
「私、回復魔法一切使えないもの。指のささくれすら治せないのよ。そ、れ、に。
「ひやぁ!?やめてくださいファスカさん!あひゃひゃ!?くすぐったい!あは!あははやめへ!?」
みんなの笑い声と、言葉が私を勇気づけてくれる。
そう、私は一歩ずつ進めばいいんだ。
そう、自分に言い聞かせて。
ある日の依頼。それは私達が拠点とする街の冒険者パーティ全員への緊急任務でした。
その日は酷い大雨で、昼過ぎだというのに暗い日だったことを覚えています。
内容は「魔王軍残党から街を死守。これを討伐すること」でした。
堅実で実力も認められていた私達のパーティは、真っ先に声をかけられたのです。報酬も後発より3倍です。
「魔王軍残党か。時々現れては撃退されている奴らだが…。外は雨で他の冒険者達もほとんど街にいるし、この任務は任せて蹴るか?」
「い、いけません!私達が信頼されているからこそギルドが真っ先に依頼してきたんです!」
「「「お……」」」
あっけに取られた三人の顔を見て、私は顔から火が出そうになりました。でしゃばり過ぎた。ただのヒーラーが…。
「言われちまったな。こりゃ。」
「うむ。魂に響いた。」
「言うようになったわねぇ〜このぉ?」
「よし。受付のアリアちゃん!」
「「「「この"鋼鉄の繋がり"が先陣を引き受けます!」」」」
考えてみると、これが魔王軍残党との初めての戦いでした。残党は基本的に統率を失ったアンデットの軍団。稀に上級アンデット。
対策はすでにできており、どこの国でも大した損害は無く撃退する戦術は組まれています。
誘き出し、まとめてアンデット浄化魔法。もしくは骨も残らないように焼き尽くすか棍棒系武器で粉々にし、浄化魔法。
私達は雨の中ですが、セオリー通りに着実とアンデットを撃破していきました。アンデットの数も報告通り100もいない。
でも雨のせいでファスカさんが得意な炎魔法がほぼ役に立たたず、雷系魔法も私達が巻き添えを受けてしまうため、私の護衛と魔導書が濡れないように傘を持ってもらいました。たまに死角から来ようとするアンデットに石の矢を当てて砕いていました。
「不服。あ、またルーカスが取り逃した。ストーンアロ〜〜。」
「ま、まぁまぁ。今回ばかりはいつも後衛の私に譲ってください」
まとめて、浄化。まとめて、浄化。
やっと私が活躍できた気がしました。セオリー通り。全部が順調。油断なく、一つひとつ。後発部隊の冒険者達も、手際よく戦う私達を勉強とばかりに見学していました。
どうやら他のヒーラー達も私の手際を見ているようで、雨の中だというのに仕切りにメモを取っており、恥ずかしくなりました。
あと少しで終わりが見える。そんな時でした。
森の方から、アンデットドラゴンが現れたのです。
上級冒険者でも倒すために一週間準備が必要と云われる、とてつもない化け物です。私達の街がある地方で現れたとは聞いたことがありませんでした。
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