ヒーラーちゃんが闇に堕ちるまで
風来坊セブン
第一章「深淵」
第1話「回復役(ヒーラー)」
闇が包む荒野。そこには似つかわしく無い純白に輝く美しい城が建っていた。
最上階のフロア。
そこにはボロ雑巾のようになりながらも、必死に立ち上がる三人の冒険者達がいた。
その中の一人、剣士のルーカスが叫んだ。
「どうしてっ…どうしてだアンジェリカ!なぜ裏切った!?なぜ闇の救導書なんかに手を出した!?」
叫んだ先には、黒く美しいドレスを着た少女がいた。純白の城に映えるその姿は、息を呑む美しさと恐ろしさを兼ね備えている。だというのに少女の表情は穏やかで、まるで女神のそれと差し支えない。
「裏切った…?そんなことないです。見てください、この綺麗で力強い闇の力を。出てきてください…深淵竜達。」
祭壇の頂上にある玉座に座したまま、周囲には闇の竜が三柱現れた。
「これは、みんなの苦しみを回復してあげるんですよ?永遠に」
「アンジェリカ!やめてくれ!」
「頼む!また我らと共に冒険をしよう!」
「目を覚まして!私、貴女のこと妹みたいにっ…」
「みんな、助けてあげるからね」
アンジェリカの目にはすでに光は無く、声は届かなかった。
1年半前に遡る。
「鋼鉄の繋がり」という名のパーティが、
”アンジェリカ”は冒険者に登録したばかりで、ギルドの隅で右往左往としており、そこへリーダーのルーカスが声をかけたのだった。
「なぁ、君は教会関係の出かい?」
赤色の短髪で、頬に火傷の痕がある少年はアンジェリカよりいくつか歳上のようである。
「はっ、はい!先日教会から卒業の許しを得て、冒険者になったばかりでしゅ!」
「ははっ!それはいい!俺達も組んで半年のルーキーさ。歳もだいたい一緒くらいなんだ。俺は鋼鉄の繋がりのリーダー、ルーカスだ。北の出身。」
「我は鎧騎士のガイマン。東の出身だ。」
握手を交わした鎧騎士はアンジェリカより格段に大きく、無精髭と筋骨隆々な男だった。本当に歳が近いのかと疑った。
「私は魔術師のファスカよ!南の出身、よろしくねっ」
南の出身ということもあり、北東にあるこの街では珍しい褐色の肌の少女だった。後ろで束ねた髪は強い日光のせいか少々毛先が荒れている。顔つきから、やはり自分より歳上の様子。
「私はアンジェリカ。聖職者…
「よし、アンジェリカ。俺達と組もうぜ?」
屈託のない、爽やかな笑顔で三人は手を差し伸べる。
私は先程まで不安だった気持ちが無くなり、その手を握りました。
「よぉし!まずは資金調達で薬草集めだ!」
「「地味だなぁ〜」」
「ふふ、薬草の発生地も教会で学んであるのでお任せくださいっ」
こうして、私の冒険が始まったのです。
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