第31話 平行宇宙

アメリカ合衆国ネバダ州 エリア51 




フロリダでの休暇が終わり俺たちは再びいつもの地球を救うための日常へと戻っていた。


 と言っても汎用人工知能が稼働している今となってはサラがいなくても例の戦艦やその他宇宙開発用機材の開発生産は順調に進んでいる...AIと人材の育成が軌道に乗ったからこそあのような長期休暇を取得出来たという訳なのだ。



 しかし俺たちに時間的余裕があるかと言われればそれはNoだ...



 例の物体X...太陽系外縁部で鹵獲に成功した物体は明らかに人工物でありその正体は恐らく太陽系内の情報を収集するための無人偵察機のようなものであろうとの解析結果がもたらされていたからである。



 そこに使われていた技術はどうやらティーガーデン文明よりもかなり進んだものであり細部は違えどアンドロメダ銀河における反帝国諸国同盟各国で用いられていたレベルに近いものであったのだ。



 しかしサラ曰くあの物体を製造したのは帝国ではないという...(ちなみに帝国の正式名称は不明とのことだ...便宜上以降アンドロメダ帝国と呼称する。)



 彼等の技術はかなり特殊であるらしくサラたちの惑星国家も含め同盟各国は殆どアンドロメダ帝国が用いる技術の解明が進んでいなかったそうだ...しかしそれだけ特殊であるからこそ直ぐに帝国が運用している機体かどうか簡単に判別できるそうだ...無論欺瞞作戦の可能性も考慮しなくてはならないが。



 ...しかし帝国による欺瞞作戦で無いのだとしたらティーガーデン文明やアンドロメダ帝国以外にこの天の川銀河で地球に対する脅威が存在する可能性があると言う事になる。



 ひとまず例の建造中の航宙戦艦の完成を急ぐ必要があるとの判断をサラは下し、時空間歪曲型空間跳躍システムと平行宇宙利用型跳躍システム及びコールドスリープ装置の搭載は太陽系防衛においては不要と判断され見送られることになった。


 

 平行宇宙利用型跳躍システムとはアンドロメダ帝国が開発運用している時空間歪曲型空間跳躍妨害装置に対抗するためサラの惑星で開発が進められていた新型のワープシステムである。


 その理論はこの我々の存在している宇宙とは別の平行宇宙へと跳躍するというものである。


 厳密にはこのシステム...跳躍と言えるものであるのかについては疑問が残る技術であるらしい...


 平行宇宙はこの宇宙と重なり合うように存在しているらしく目的地まで到達する前には結局己の艦艇の推進機関を利用する必要があるのだ...つまり時空間歪曲型に比べてはるかに効率で劣るものである。



 だが平行宇宙とこの宇宙では時間の流れが異なるらしく跳躍が完了すればあたかも一瞬でワープしたように感じられるとの事だ...平行宇宙と言う概念がまだ発見されたばかりでありまだ解明されていない事は多いのだが...


つまりそのためのコールドスリープ装置である...完全無人運用であれば考慮しなくてよいが平行宇宙空間を移動中にはコールドスリープ状態で乗組員を保護する必要があるのだ...もっともあくまでこの平行宇宙利用型は妨害装置の影響外まで移動する用途がメインであるためそこまでの長距離跳躍は想定されていないのだが...



 時空間歪曲型と平行宇宙利用型を併用することで帝国の妨害を無効化することが期待されているのである。



 また平行宇宙の利用価値については他にも様々考案されているようだ。

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