第26話 Initiative

アメリカ合衆国ネバダ州 エリア51




 「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない」...その言葉が俺の脳内を木霊する。誰の言葉だったか忘れたがそんなセリフがあったはずだ...


 その言葉は文字通り今の俺にピッタリ当てはまるだろう...足を止めればまさに後ろに後退するだけ...



 ランニングマシンを走り続ける俺は汗だくで正直もう限界が近いが、足を止めることを彼女は許してくれそうも無かったのだ。ヨハンナに誘われてこのトレーニングルームに来てみたらこのザマだ...


 (走れ!走れ!どうした!?ママの腹の中にタマを忘れてきたのか?それでもタマついてるのか?)


 いや、タマついてるかどうかはもう君は見たでしょ...ていうかヨハンナキャラ変わってない?それに彼女は空軍所属で海兵隊じゃなかったような...


 (口答えするな!根性を見せろ、調子がいいのはベッドの上だけか!?)


 勘弁してくれ...いつのまにか俺は海兵隊に志願してしまっていたのか?


 それから1時間以上だと思う...ランニングマシンの次はプランクと言う体感トレーニングをやらされた...


プランクって見た感じは楽そうに感じるのだが実際はこれかなりきつい...運動不足の元サラリーマンにはハードすぎる。


 ようやくトレーニングが終わりヘトヘトになった俺にヨハンナが飲み物を差し出してくれた...


 (はい、お疲れ様。)


 彼女から差し出されたオレンジジュースを俺は一気に飲もうとしてむせてしまう...


トレーニングが終わった後の彼女がいつも通りの態度に戻ったため俺は安心したのだが...


 まあ、ちょっと俺の体力が無さすぎるってのもあるのだろう...プラス思考で考えよう。タダでこんなジムを使えて優秀なトレーナー付と考えればお得だろうか?


 とりあえず今は汗だくなのでシャワーが浴びたい...


 (ちょっとシャワー浴びてくる...)


 (なら一緒に浴びる?ちょうど私もシャワー浴びたいから。)


 (えっ)


 (確かちょうどキャンドルがあったから今日はバスタブにお湯でも貼る?)



 あー、なんかキャンドル灯して入浴するやつね、いい加減そろそろシャワーだけじゃなくて湯船にゆっくり浸かりたかったところ...いや、そうじゃなくて一緒に?


 俺は風呂は一人で入りたい派だ...なんていうか恥ずかしいし落ち着かない。


 だから俺は銭湯とか温泉もあまり好きではないのだ...まあ今回はそういうレベルの話じゃないが。


 まあ、しかし俺に拒否権はない。なんか既にいろいろな主導権を彼女に握られている気がする...




 




 中国 重慶




 ここ重慶市の地下施設においてある3隻の宇宙船の建造が今まさに始まろうとしていた...


 計画では2隻は150m級宇宙駆逐艦そして1隻は300m級の宇宙船であり、この地球においてアイオワ級に次ぐ実に80年の時を超えて復活した戦艦の名を冠する艦艇であったのだ。


 中国船舶集団が建造を進める3隻の宇宙艦艇は中国共産党が己の威信をかけて地球人類において初の重力制御装置を搭載した、来るべき対米戦における切り札でもあったのだ。


 しかしこれらの兵器を中国が自力で開発したわけではない。


 この地下施設を一人の深くローブを被った人物が巡回する...


 そのローブの奥には硬い角質でできた丈夫な鱗で覆われており、明らかに地球人類のそれとは一線を画する特徴を備えていたのである。


 彼こそ地球人がティーガーデンcと呼ぶ惑星より地球へ逃れた種族の生き残り、末裔であった。


 爬虫類を祖とするヒューマノイド型知的生命体...絶滅したと思われた彼等はアメリカ大陸からユーラシア大陸へと渡り生き延びていたのだ。それでも彼らの個体数は100に満たない...だからこそ地球人類を利用するためついに行動を開始したのである。


 彼らの計画は地球人類の自滅を誘い自らが主導権を握ることであった。


 今までそのチャンスが無かったわけではない...かつてアメリカとソビエトの冷戦構造が存在した時、彼等の中でソビエトに技術を提供してアメリカとの全面戦争を誘発すべきとの主張が存在したのだがそれが実行に移されることは無かった...


 今まで身を隠し地球人類を観察した結果の判断であった...アメリカとソビエトは結局のところ細かい分類はさておき同じ白色人種であり、最後の一線は踏みとどまるだろうとの判断を彼等は下した。


 結果的にそれは正しかったのかもしれない...結局米ソの対立は全面的な核戦争にまで発展することは無かった。それは地球人が理性的であったからだろうか?


 ...レプティリアンたちはそうは考えなかった。結局彼等は同じ人種同士であり絶滅戦争を引き起こすほどに対立をしているわけではないと考えたのである。だからソ連に技術を提供することは無かった。


 その後、ソ連に代わり台頭した国に彼らは目を付けた。


 中華人民共和国...アメリカと異なるイデオロギーを持ち人種も違う彼等なら最後の一線を越えるだろうとの判断をしたのである。


 レプティリアンたちは中国に極秘裏に接触、自らの持つ技術を提供したのだった...


 アメリカと中国を衝突させ第三次世界大戦を誘発させることが彼等の目的であった。


 そして戦争の後、人類を救済するとの名目で主導権を握り地球の支配権を手にしようというのが彼らの計画...


 全てはあの忌まわしい虫どもに対抗するため...


 我々はまだ慈悲深い方だ、地球人類の事を利用しようとはしているが絶滅させようとまでは考えていない。


 我等に従うのなら毛無し猿とはいえ生存くらいは許容しよう。


 我等の再起の時は近い。




 

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