第24話 鈴を鳴らしながら進む

アメリカ合衆国ネバダ州 エリア51 クリスマス




 クリスマス...それはキリスト教圏において特別な日でありこのエリア51においてもそれは例外ではなかった。


 このような特殊な施設にクリスマスの飾りつけがなされているのを見ると何か拍子抜けというか脱力感というか...まあそれだけクリスマスが重要な日だという事の証明なのだろう。


 俺たちはこの基地内の居住エリアに部屋を与えられそこで暮らすことになった...最優先はブラックホールエンジンの生産であるが、それとは別にティーガーデンbに存在する文明対策として既存兵器での対抗手段を開発中である。


 まずアンドロメダ銀河で用いられていたレベルの汎用人工知能と超電導バッテリーの開発...


 AIの方に関しては嫌な予感しかしないがサラが言うにはアンドロメダ銀河においてAIの反乱は発生していない為心配無用とのこと...そういえばサラが未来から殺人アンドロイドが送られてくる映画の2作目を見て号泣していたな...


 どうでもいいがあの女が泣くのを初めて見たので驚いたよ...いや、泣いたのは俺の体なのだが。


 まあ、とにかく俺たちはこれらの仕事に忙殺される日々を送っていたのだが今日ばかりは休暇である。


 折角アメリカのクリスマスなのだから七面鳥を焼いてみることにする...自分で外に買い出しには行けない為注文リストにほしいものを記載して買ってきてもらったのだが...


 とりあえずターキーにシャンパン...あとヨハンナがラザニアとクッキーを作ってくれている。


 あれからの俺たちは...まあ、うまくやっていると思う。彼女もこの基地に居住することになったのだ...当然の事ながら機密保持のためであろう。


 本来のクリスマスは恋人ではなく家族と過ごすものらしいが...今現在俺はもちろんヨハンナも家族と一緒に過ごすことは出来なさそうなので二人で過ごすかエリア51の職員とパーティーとかそんな感じだ。


 プレゼントは用意したほうがいいのか分からなかったが一応準備はしておいた。まあこれも自分で買いには行けなかったので本当に一応と言うレベルだが...


 その代わりと言ってはなんだが人生で初めてクリスマスカードとやらを書いてみたのだ、ネットでどんな内容で送ればいいか調べたのだが...日本人の俺的には恥ずかしすぎる文言が例文として沢山出てきてしまい困惑してしまった。



 まあ英語なので深く考えずにそれっぽいことを書いておいた...読めない言語なら恥ずかしさを感じにくいものだ。このシーズンによく流れるクリスマスソングの歌詞の一文とかまあそんなところを参考にして書いたカードをヨハンナに渡してみたのだ。



 それで渡してみた結果だが...たぶんかなり喜んでもらえたと思う。カードを読んだ後熱いハグされたし...


 (そういえば、ヨハンナってどこ出身なんだ?)


 よくよく考えると俺は彼女の事をまだ詳しく知らないのだ...よくお互いを知る前にこんな関係になってしまったのは健全とは言えないかもしれない。


 (私?リーブス郡ってとこ、テキサスの田舎の方だから知らないでしょ?)


 テキサス...テキサスか...


 まあ一度行ってみたい州ではある。懸念事項については何も言うまい...


 その後もお互いの事をいろいろ話したりしながらクリスマスディナーを続けたのである。プロムの事は聞かないほうがよかったと後悔したが...


 当時の彼女の相手はアメフト部のクォーターバックだとの事...


 なんていうかあまりにも想像通りというか...嫉妬する気も起きないね。いや、本当に



 まあでもたとえこの施設に閉じ込められているという状況を考慮してもなんだかんだ楽しいクリスマスを過ごせたと思う。少なくとも去年とは比べ物にならないくらい充実したクリスマスだ。



 それにしても俺は何か忘れているような気がする...最近いろいろありすぎて脳の処理が追い付かないせいかもしれない。


 まあ大事な事なら後で思い出すだろう。




 東京 福生市


 冷たい風が吹きつける、世間はクリスマスムード一色...無理もないか、あのパンデミックが終わり久々のクリスマスだから皆浮かれているのだろう。


 新島加奈巡査部長はクリスマスの街並みを一人で歩いていた...目的地などない、ただあの監視カメラに写っていた外国人女性が休日なら基地の外に出かけるだろうという予想の元、福生駅や基地周辺で張り込みを続けていたのだ。


 ただそれも全く成果が上がっていなかった...当然の事ながらこれは私が個人的に行っている事であり職務ではない...


 こんなことになるならもっと早く速人の事...結局私はアイツとの友達と言う関係を壊すのが怖かったのかもしれない。


 当然私達の年齢だからお互いに別の恋人がいた時期もあった...結局私の場合長続きはしなかったし速人も当時付き合ってた彼女と直ぐ分かれていた。



 しかしここ数年お互いにフリーだった...もっとはやく行動すれば結果は変わっていたかもしれない。


 付き合うとか付き合わないとかそういう問題じゃない...ただアイツのもっと傍に居てあげられたら今回の件も防げたかもしれない...


 私の脳内を終わる事の無い後悔が支配していた...そしてその後悔の念は一層の事、真実を明らかにするという私の決意を強くしたのである。

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