第23話 ティーガーデン
アメリカ合衆国ネバダ州 エリア51 一週間後...
クリスマスを目前に控えたエリア51のブリーフィングルームに多くの人員が集まっており喧騒に包まれていた。例の謎の宇宙文明の艦艇の解析がほぼ100%完了したためその成果を共有するための会議が行われようとしていたのである。無論今まで全く解析が進んでいたわけではない...この80年以上の歳月で得られた成果は大きく、地球人類の技術の発展はまさにこの遺跡からもたらされた技術由来のものが多く存在している。しかしその全てを解明出来ていたわけではなかった。
俺の体を借りたサラがマイクを持ちプロジェクターにある画像が映し出される...それは地球より12.5光年ほど離れたティーガーデン星及びそのハビタブルゾーン内を公転していると思われる二つの惑星、ティーガーデンb及びティーガーデンcに関する情報であった。
サラが解析した結果この遺跡...地球への入植を行おうとした文明はティーガーデンcと呼ばれる惑星出身の知的生命体であることが判明したのだ。幸いな事にこの文明が使用する文字体系については50年ほど前にアメリカが既に解明済みであり、プロテクトを解除した段階で連中の情報全てにアクセスすることが可能になったのである。
どうやらこの恒星であるティーガーデン星を公転しているb及びcにはそれぞれ知的生命体...つまり異なる文明が二つも存在していたらしい。このような極近距離に異なる文明、種族が存在するような例はサラは初めて見たと言っていた...アンドロメダ銀河においてもこのような例は存在しなかったとのことだ。考えてみればまさに天文学的な確率といえるだろう。この広い宇宙に同じ銀河、そして同じ恒星を公転し同じタイミングで知的生命体が誕生...そして彼らの技術もほぼ同様のレベルであったというのだ。
そして当然の事ながら異なる種族の文明が宇宙進出を開始すれば何が起こるかは火を見るよりも明らかであっただろう。
このティーガーデン惑星系の覇権を争いbとcの文明は衝突...数十年続いた宇宙戦争はb側の文明が勝利し終結したようだ。この戦争はまさに文字通り絶滅戦争と呼べるものでありティーガーデンc文明種族は惑星系外に逃げ出したわずかな生き残りを残し消滅したという...
敗北したティーガーデンc文明の残党は遥々当てのない逃避行を続けついに地球へとたどり着いたという訳だ。
彼等は自らが生存可能な惑星である地球への入植を開始...いつの日かこの太陽系で勢力を立て直し再び再興の時を待った...しかしそれも叶わなかった。
彼等の技術はアンドロメダ銀河のそれと比較するとかなり低いレベルであり空間跳躍システム...つまりワープ技術は保有していなかったのだ。光速の10~20%程の速度を出す宇宙艦艇は保有していたのだがその程度ではあまりに宇宙は広すぎる。最速で計算しても地球まで62.5年ほどの歳月を必要とすることになる。
ようやく地球へとたどり着いた彼らに待ち受けていたのは地球環境の過酷な洗礼だった...結局彼らは地球環境に適応できずに生き残りのティーガーデンc星人はこの地球で完全に絶滅したようだ。
その彼らが残した遺跡がこのエリア51の地下という訳だ...
ここで問題が一つ浮かび上がる...それはティーガーデンbに今も存在すると思われる文明についてである。
当然の事ながら彼らもこの地球までたどり着けるだけの技術を有しており、我々がティーガーデン星を観測出来ているのと同じように向こう側も地球を観測していることだろう。
もし彼らが自分たちの惑星系の覇権だけで満足していないようであれば...
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