第13話 収斂進化
それからの俺たちは何を話したか...緊張しすぎて忘れちまったよ。
だってそうだろ?どう考えても彼女はこんな安アパートに似合わないし現実感が無い...まるで宇宙人と同じくらい非現実的だ。しかし今はそのどちらも存在している...
気が付いたら彼女は俺の料理を食べ終わり、もう時間だからと帰ろうとしたのだが...
外はいつの間にか雨が降り始めていた...そういえば予報では午後から雨であるとニュースで言っていたっけか...
(料理美味しかった、またいつかお礼は必ず....)
(いや、別にいいさ。大したことじゃない...例のメモリーカードを渡してくれるだけで十分だよ。...それより車で送ろうか?)
(いや、大丈夫。ちょっと歩きたい気分だから...傘だけ借りてもいい?)
(ああ、紳士用しかないが...地味な傘でよければ。)
(ありがとう、今度必ず返すから...また会える?)
俺は返答に少し迷ったが、軽く頷いて返事をしたのだった。
「Bye ハヤト。」
雨脚が強くなる中、彼女は傘を差し帰路に就いたのだった。雨の街の中へ消えていく彼女の後姿を俺は暫くの間見守っていた...
(よう色男、うまく彼女をモノに出来たか?)
...お前寝たふりをしていたな?というよりなんだその口調は?
(私も勉強しているのだよ、これからアメリカに行こうというのだからね...彼等アメリカ人の事を映画で学んでいるのさ。)
ああ、もう全く。誰かコイツの口を塞いでおいてくれ...
(しかし貴様と言う奴は積極性と言うものが無いな。私は地球人の自由恋愛については少し学んだが、もっと積極的かつ情熱的に行くべきだと思うね。)
洋画ばっかり見てるからそう思えるんだ。現実は違う...それに俺は日本人だ。
(彼女はアメリカ人だろう?)
映画見ただけで恋愛マスター気取りとは恐れ入ったよ全く。
(今回の貴様の女性への対応を採点してやろうか?)
いいや結構、お断りだ。
(60点くらいだな。まあ最悪という訳ではない。)
結局するのかよ、ほっといてくれ。いいかサラ、君の計画には協力はするが...俺の恋愛についてまで干渉しないでもらいたいね。
(何故?他に好意を抱いてい女性でもいるのか?...もしかしてよく貴様に連絡をしてくる同級生の警察官の女か?)
(アホ抜かせ。それこそただの同級生だ。)
(そうか、ならいいだろう。私の見立てではあの中尉の女は貴様に気がある、間違いない。)
それは君が彼女に俺の因子だかなんだかよく分からんものを送ったせいだろう?
(だとしてもだ、あくまできっかけに過ぎないと言ったであろう?なぜそこまで嫌がる?彼女に何か問題があるとは私には思えないが。)
...どう考えても彼女に俺では釣り合わない。
(そう自分を卑下するな、貴様の顔面偏差値は中の中の少し上くらいはあると思うぞ?それとも社会的立場の方を気にしているのか?それならば問題ない...それは私がなんとかしよう。)
慰めは結構だ、顔のレベルくらい自分自身が一番分かってるよ。それに向こうは上の上だ...ていうか違う種族の女性に地球人の美醜の感覚が分かるのか?
(我々と地球人の美的感覚には近いものがある。アンドロメダ銀河においても知的生命体の殆どはヒューマノイド型の種族だからな。特に我々の惑星の種族は地球人との見た目の差異は少ないと言えるだろう。)
そういうものなのか...違う惑星、違う銀河だというのに姿形が似るというのは偶然なのだろうか?それともイルカとサメが似たような姿をしているのと同じ理由であろうか?
確か収斂進化と言ったか...全く異なる系統の生物であっても生息する環境が同じであれば似たような進化をするという理論であったと思う...
それがもしかしたら宇宙にも当てはまることなのかもしれないとふと俺は考えたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます