第5話 銀河の危機2

なるほど、こいつは重症だ。 俺の頭はもうおしまいかもしれん。






(私にも疑わしいが貴様の脳は正常だ。現実を認めてもらわなければこの銀河は救えんぞ。繰り返しになるが貴様にも大いに関係のあることだ。)






 ああ、もうわかった。つまりあんたの計画とやらに手を貸せばいいんだろ?






 サラの計画...それは地球において彼女が開発していたブラックホールエンジンを開発、量産...来るべきアンドロメダ銀河の帝国に対して対抗することが彼女の計画であった。彼女が地球側に技術を提供する代わりに将来的には母星を、そしてアンドロメダ銀河を解放するために協力を取り付けたいというものであったのだ。




 しかしねぇ、サラさんよ。地球人は太陽系はおろかお隣の火星すら有人では未到達...そんな壮大な計画が実行できるとは到底思えないのだが。




 (心配は不要だ。私の脳内にはブラックホールエンジン以外にも恒星間航行に必要な各種技術や兵器関連の知識もある。設備や人材さえ用意出来れば今の地球において基礎技術の発展に少々時間をかければ可能であると判断している。どうやら貴様たちの文明は歪な発展をしているようであるしな。)




 歪?




 (そうだ、通常このレベルまで文明が向上した種族は惑星に統合統一した国家が誕生している場合が多い。しかし地球人は未だに同種同士で争い、まとまりきれていない。これはかなり希少な存在と言えるだろう...少なくとも私が知る文明の中ではの話だが。)




 へぇ、そいつはどうも。同種で争う下等生命体で悪うございました。




(そうはいっていない。むしろその影響なのかもしれんが、貴様たちは文明レベルと比較して兵器技術が突出して高い傾向が見られる...これは帝国と戦う上で好ましい特徴と言えるだろう。)




 なんだ、褒めていたのか。その言い方では全くそんな気はしなかったのだが。しかしまあ、その計画は良いとしてなんで俺なんかを選んだ?と言うよりこの広い天の川銀河でなぜ地球を選んだんだ?こちらの銀河には地球の他に知的生命体は存在しないのか?




 (質問が多いぞ、まあ仕方ないか。前者の質問に対しては貴様を選びたかったわけではない。思念昇華技術は私の夫が開発したものであり、私は殆ど無知に等しい。理由は不明なのだがどうやら憑依対象は誰でも可能という訳ではないようなのだ...貴様に憑依出来そうであったからに過ぎない...なにしろ1秒でも時間が惜しい立場にいるのだからな。)




 なるほど、ただの相性の問題ね...なら地球を選んだのも相性みたいな理由なのか?




 (いや、そうではない。そもそも私は天の川銀河の情報を殆ど有していない。私は質量が0であるため光速で宇宙空間を移動することが出来たのだが単独では空間跳躍することは出来ない。ワームホールを出た直後地球を偶然発見できたに過ぎないのだ。)




 なるほど...よく分からないことも結構あるがコイツ...要するにここまでたどり着いたのも偶然の運任せだったってことじゃねぇか...


 


本当に大丈夫なのかこいつ?






 (心配するな、ここまでたどり着けたのも貴様らの思想で言うところの運命と言うやつだ。)






 ...で俺は何をしたらいいんだ?自分で言うのもなんだが俺はただの平凡なダメ男だぞ?




 (なに、私がいれば大丈夫だ。ではまず貴様の体を貸してくれ。)

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