第133話 ダンジョン攻略③

 順調に特級ダンジョンを進み、兎人カニヒェンに関しては動きを完全に把握したので、苦労することなく2層目にたどり着いた。


「今日はここで野営だよ。師匠は結界の理法具を設置して結界を張ってくださいね」

「了解」


 お母さんが師匠に声をかけると、理法具を4つ取り出してから適当な場所に置いていった。


「その理法具を置くだけで結界が張れたの?」


 私は初めて見る理法具だったので、興味津々に質問をすると、師匠は首を横に振ったあと笑いながら答えてくれた。


「まだ結界は発動してないよ。理法具という物は理力を流すことで発動するからね。今から理力を流すからよく見ておくんだよ」

「うん」


 師匠は話が終わると、理法具を置いた場所の真ん中に移動する。そして真剣な表情で両手を上に向けて声をあげた。


「はっ!」


 師匠の声に反応するように、4つの理法具が発光を始めると、ドーム状になったところで光は消えて見えなくなった。


「ふぅ、これで結界を張り終わったよ。基本的には魔物の侵入は許さないけど、絶対ではないんだ。深層へ進めば破られる恐れがあるので、交代で見張りをする必要が出てくるからね」

「そうなんですね。この結界は張った人の強さに比例するとかなの?」

「いや、注げる理力の限界があるからね、ミナやマールが張っても変わらないよ」


 理法具に注げる限界があると聞いたので、次に野営をする時は、結界を張る役目を任せてもらおうと思った。


「次は私に任せてくれる?」

「判ったよ。さぁ、ミナがテントを張ってるから手伝っておいで」

「はい」


 次の結界を張る約束をして後は、お母さんのテント張りや食事の準備を手伝って、特級ダンジョンでの初日を終えたのだった。


 日帰りの頃とは違って、身の回りのことを自分でする大変さを身に沁みて感じた。


(普通にアリシャがしてくれてたけど、自分でするとこんなに大変なんだね……)


 夕食を済ませると、お母さんが濡れタオルを手にしながら話しかけてきた。野外だとお風呂に入って汗を流すことはできないので、汗を拭き取って少しでも清潔にするんだね。


「ほら、装備を外しなさい。私が汗を拭いてあげるよ」

「ありがとう」

「今回は同性だけのパーティーだから大丈夫だけど、男女混成だと汗を拭くこともできない場合があるからね」

「それは大変だね」


 私が装備を外して、お母さんに身体を拭いてもらっていると、師匠が『マジマジ』と凝視するのが気になった。


「ん?」

「あははっ、師匠は『ツルペタ』だからマールのことが羨ましいんだよ」

「うっ……、うるさい!ちゃんとあるよ!」


 お母さんが笑いながら『ツルペタ』とか言うもんだから、師匠は顔を真赤にしながら言い返してたけど、両手で押さえるものだからボリューム不足なのが際立っていた。


 その後は、私がお母さんの汗を拭いてあげたので、ついでに師匠も拭いてあげようと思い声をかけたけど、全力で拒否されたのだった。

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辛い過去に立ち向かい、幸せを掴むまで 小桃 @tama19720728

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