(2)
「あの……、あのとき、自殺された方、どうしてあそこで亡くなられたか、覚えていらっしゃいますか? 良かったら教えていただきたいんですが……」
「ええ? なんで、知りたいんだ?」
「やっぱり、ご遺体を見つけたのは縁があると思うんですよ。一度、お墓参りに行きたいとずっと考えていたんです」
私は、すらすらと思ってもいないことを口にした。
「へぇ。甥も喜ぶよ。まぁ、墓参りは大袈裟とは思うけどな」
意外な言葉を聞いて、私は驚いた。
「甥? 甥御さんだったんですか」
「うん。これもなにかの縁なんかねぇ。篤の両親と
「でも、何故、あの家で……」
わざわざ叔父の所有する家で、首吊り自殺するのには何か訳があるんだろうか。まさか、この叔父に嫌がらせする為に?
私の下世話な憶測は、宍戸の言葉で否定された。
「元々、あの家は篤の父親の家なんだ。篤はあそこに住んでたんだよ。ま、それがどうして自殺に至ったかは、当時、散々マスコミが騒いだから調べりゃ、すぐわかるよ」
「あの、何があったんですか」
「一家心中。篤はその生き残りでね。後遺症なのかなんなのか、それで精神を病んでしまってね……。これもあんた、調べたら分かるけど、あの家、ある家族に
「え? ということは……、亡くなられたのは、過去の事件のせいなんですか?」
「一応無罪になったけど、退院してすぐ首吊っちゃって。それをあんた……鷹村さんが見つけた、と」
「そういうことなんですか……」
けれど、過去にそういうことがあったとしても、今起きている問題が解決するわけではない。
「じゃあ、噂を聞きつけた輩がたくさん来るでしょう」
自分も思春期の時に先輩といっしょに、あの家で悪さをした。人のことなど言えないが、今は過去を顧みているわけにはいかない。母と隼也の為にあの空き家をどうにかしたかった。
「来るねぇ。とにかく一年前に不法侵入した大学生……、なんだっけ? YouTuber? そういうのが勝手に入って、結局、行方不明だよ。こっちは迷惑してるんだ、全く……。篤の時みたいにマスコミが来なかったのは助かったけどな」
「そ、それは大変でしたね……。それも後を絶たないんじゃないですか?」
「だいたい、あの家、元々良い土地じゃなかったんだよ。兄貴があそこにあった石塔を壊すし、丁字路に門構えちゃうし。だからろくなことしか起きないんだよ」
「それで取り壊しを?」
「そう。市から倒壊しそうな家屋は更地にするよう言われててね。そのうち、しようかななんて思っててね。あ、今の話、誰にも言わないでくれよ。ほんとに、あの家、縁起が悪いんだ」
「良ければ、うちの母が近づけないようにもしてほしいんですけど……」
「ああ。それが本題か。いいよ。不良が寄りつくのも迷惑してるから、警官に見回り増やすように言ってみるわ。それでいいか?」
「はい、すみません。助かります。ありがとうございます」
「うちも迷惑してるから、良いよ」
「ありがとうございます。それじゃ、失礼します、はい」
そう言って、何度も頭を下げながら、私は電話を切るボタンをタップした。
さっそく、私はノートパソコンのブラウザを開いて、あの空き家に関する噂や事件を検索してみた。
「臼井家皆殺し事件」
「二○○X年XX月XX日未明、福岡県a市b区のUさん宅で、主人のKさん、妻のRさん、長女のAちゃんが殺害されているのが、Kさんが勤める会社関係者の通報によって発見されました。容疑者の宍戸篤は○○病院を退院したばかりで、宅配便を装ってU宅に侵入したと見られています。Aちゃんを殺害した後、帰宅したRさんとKさんを殺害。遺体は損壊が酷く、捜査は難航している模様。弁護側は、事件当時、宍戸篤が心神喪失状態であったと述べています。」
「YouTuber大学生失踪事件」
「K産業大学二年のAとBの二人が、YouTubeチャンネルの動画撮影を目的とした、虎ロープの家に不法侵入。某掲示板で流行った降霊術である一人かくれんぼを実行し、ライブ放送中に機材トラブルが発生し、実践していたAが消息不明になった。いまだに見つかっていない。」
「心霊スポット 虎ロープの家」
「福岡県a市に、約三十年前に一家心中があったと噂される日本家屋の廃墟がある。門前に虎ロープが張られていることから、虎ロープの家と呼ばれている。」
「霊視 押し入れがやばい」
「実は、先日、虎ロープの家に行ってきました。噂通り、超やばい廃墟です。霊感のある友人のA君を連れて、中に入ったところ、座敷にある押し入れから、とんでもない霊気を感じたらしく、A君は早速リタイア。私一人で探索し、心霊写真をカメラに収めることに成功。たくさんのオーブが舞い飛んでいました。撤退して数日経ちましたが、何も起こってません。」
「呪われた首縊りの家」
「虎ロープの家・・・一人目、S家当主リビングで
等がヒットして検索の上位に並んだ。
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