ある女の子の心をつかんだお話

はづき

ある女の子の心をつかんだお話

 コロナ禍前にあったことなので、4年ほど前のお話です。私は地元のとあるスーパーのレジ係として働いており、この日も普段通り仕事をしていました。


 夕方頃だったかと思います。3歳か4歳ぐらいの女の子のお子様とお母様が一緒に私のいるレジに来ました。お子様と言えば『テープ貼ってください!』と持ってきたお菓子をレジ係の者に渡し、購入済みのテープを貼って『はいどうぞ~』とお返ししておりますね。


 しかし、この女の子はお菓子を大事そうに抱え、なかなか私に渡そうとしてくれません。それを見かねたお母様が女の子からお菓子を無理矢理取り、お買い物カゴに入れてしまいました。取り上げられたと思ったのか、女の子はギャン泣き。レジ打ちをしながら一部始終を見ていた私は、女の子が持っていたお菓子に購入済みのテープを貼り、渡しました。もちろん、レジ打ちしてからですよ。


 それでも、女の子の目にはまだ涙があふれていました。全ての商品を打ち終わり、お母様をセルフレジへ案内してすぐに女の子の姿が目につきました。


(あのまま帰ってほしくない。)


そう思った私は、


「おいで。」


と女の子に声をかけて手招きしたところ、私のもとへ来てくれました。制服のポケットからティッシュを取り出し、涙をそっと拭き取ってあげました。


 そんなことをしている間にお母様がお支払いを終えました。その場を去る際に、


「ばいばい!」


と、女の子が自分の意志で私に別れの挨拶をしてくれたのです。私も、


「ばいばーい!」


と言って、手を振って挨拶のお返しをしました。


 私は小さい頃、外出先で迷子になり大泣きしながら自分の足で数km歩いて家に帰ったという、苦い経験があります。その経験があるからか、泣きじゃくる子供を見るとほっとけなくなり、助けたくなります。


 女の子は無意識に『ばいばい!』って言ったのかもしれません。もし私が何もせずほっといたとしたら、こんなことはなかったかもしれません。そう思うと、心を開いてくれたというか、心をつかんだという、私にとってプラスの出来事になったのでしょう。


 以前とあるお客様から私宛に、『自分たちお客様をよく見ている』とお褒めの言葉をいただきました。この出来事も、例え小さい子供が相手でもしっかり見ていた私の行動力があってこそだと思っております。

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