美食への道

鐘白

第1話 自己紹介

 私のプロフィール。上京して三年目になる22歳女。中小企業で働く平凡な労働者。因みにシフト勤務。

 

 そんな私の最大の欲は食べることだ。

 

 たまの休日の楽しは、外食をして都内を徘徊すること。

 食べに行く料理はどれも、ソースが効いたこってりとしたもの、スパイスが効いたエスニックなも、天高く盛られた特大サイズのものだ。それを最大限に楽しむためと節約で、平日は粗食を食べている。

 

 納豆1パック、豆腐1パック(300g)、もやし200gほど、他野菜少々、卵2つ、白米1合(360g程度?)。

 1日の摂取する栄養、大体こんな感じだ。上記の食材を上手く組み合わせて料理にする。

 エッセイということもあり、晩ごはんづくりの様子を細かく描写していく。仕事から帰り、シャワーを浴びて落ち着いたら、ほぼ毎日、このルーティンである。

 

 まずはご飯を炊く。ホームセンターで購入した蓋付きの鍋に、1合分の白米、水を入れる。20分ほど浸水させる。

 「米を炊くのに鍋?」と思われる方も多いだろう。

 しかし、6畳1kの単身者向けのアパートで炊飯器などという、デカデカしたものを置くスペースはない。炊飯器は最低でも1〜2万円する。なら白米を買った方がいい気がしてしまう。実際、2万円あれば米が約75k分買える。

 そして鍋だと、途中で蓋を開けて具材を投下したり、水を多めに加えてお粥にもなる。お粥は、腹持ちが良いので貧乏にはうってつけの一品。麺類も茹でることができるし、炒め物も作れる。1つでメイン料理の完成だ。ありがとう、ニ〇リの鍋。謝謝。


 それはさて置き、浸水中は洗濯物を干したり、布団に横になってダラダラと本を読んだりする。素晴らしい時間の有効活用である。

 

 適当に休んだら、アパートに既に付いていたIHコンロで弱火にかける。その間に、おかずの用意だ。

 まずはメイン料理から。先にモヤシ、小松菜をアルミホイルに乗せてオーブントースターで10分焼く。味付けは醤油とマヨネーズ。ジリジリとオーブンの秒針が聞こえる。

 焼き上がりまでは再び優雅な読書タイム。と、思いきや早々に「チンッ!」と焼き上がりを告げる音。米はまだ炊きあがっていない。オーブンで余熱調理と言い訳してメインディッシュを無視。布団に寝転びながら、再び優雅な読書タイムだ。


 ダラダラと言葉と言葉を追っていると、IHコンロから、「ピーピー」と、急かす声が聞こえてきた。加熱不可のお知らせが、狭い私の城に響き渡った。米が炊き上がったか…しょうがない。料理に本腰を入れよう。

 

 IHを停める。米に極々少量の水を加えて、蒸す。


 トースターで待機させていた野菜の上に卵を2つ割り入れる。卵黄が燦然と輝いていて美しい。白身のみ固めた半熟にしたいので、約3分程度焼く。

 その間に、味噌汁用のお椀に豆腐半分、合わせ味噌、水を入れる。トースターが停止したら、700wのレンジで2分チンする。

 納豆に酢醤油を掛ける。残りの豆腐は冷奴。

 そうこうしているうちに、白米の蒸らしも終える。フタを開けると、温かな湯気が台所に広がる。

 

 テーブルには、炊きたての白米と出汁の香りが広がる豆腐の味噌汁。たっぷり野菜と半熟目玉トースター焼き。納豆と冷奴。

 今夜も豪華なフルコースディナーだ。


 まずはやっぱり炊きたてご飯だ。ゆっくりと噛むと、甘みが感じられる。炊きたての白米は最高だ。

 次に、オーブン焼き。トロリとした卵黄に、シャキシャキのモヤシと小松菜を絡め、口に運ぶと、卵の優しい甘さがふんわりと広がる。小松菜のほのかな渋味が、卵の甘みを引き立たせる。チョロっと醤油を垂らすと、コクが深まり美味しい。

 口腔内が熱くなってきたので箸休め。酢醤油で混ぜた納豆と冷奴がサッパリとした気分になる。納豆菌で腸内環境が整った気になるしね。

 時々味噌汁を飲むことで、ついついご飯をかきこんでしまうのを防ぐ。

 素材を加熱しただけの、シンプルな料理。だけど、仕事の疲れや、脳に張っていた糸が解け、弛緩していた筋肉が休まり、全身の力が抜けていく。

 すっからかんの胃袋にうってつけだ。こうして、仕事の日は薄味を食べて、舌の感覚と脳と胃袋をリセットさせる。

 休日に複雑な味の料理を食べる喜びが何倍にもになる。

 

 次の休みは、何処に行って何を食べようか、そんなことばかり考えている。

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美食への道 鐘白 @Kaneshiro226

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