第17話 なんともいえないお客さんの話
車内で会話する内容は、大体が他愛のない話ですぐに忘れてしまうものだ。そんな中で過去一番印象に残った内容を話したいと思う。ただ、知ってどのような感想を抱くかは私にもわからないのでつまらなかったら申し訳ない。
そのお客さんは二十代前半くらいの青年男性だった。どうやら東京で事業を興すか社会経験を積むつもりで地方から出てきたらしい。それを聞いておお、志があるなと第一印象はよかった。しかし、だんだん話していくにつれておかしくなっていった。
今の政界にはもっと芸能人を入れるべきだ(芸能人はみんなから注目されるからちゃんと公務をするはず)といい始めたり、携帯電話(当時まだスマホはなかった)は電波で脳がやられるから使わないほうがいいといいながら実家との連絡用に早く携帯電話が欲しいと話してきた。
初めのころは、そうですねとかわかりますなどといろいろ相槌をしていたが、だんだんと「こいつはヤバいぞ、深入りしないようにしなければ。しかし、変に刺激しては危険かも」とおもい、はぁとはいに色々と抑揚をつけて切り抜けることにした。
そうして、彼が愛媛県は特産のみかんをもっと売り出すべきだ、例えば果汁100パーセントのジュースを出せば絶対にはやる、と言い切ったところで目的地に着いて降りていった。もう少し着くのが後だったら、あの商品名を出して全力でつっこんでいたので危ないところだった。
ほかにも色々言っていたが微妙に面白くなさそうなので割愛するが、彼は何者だったのだろうか。そして、あれからどうしているのだろうか。
よしてん~あるタクシー運転手のつぶやき~ 似鳥ミツル @nitorimitsuru
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