第3話モミノキ
「大事な甥っ子だからと言って優遇はせん。
自分の力で我が社に入ってみろ」
僕の父は弟である叔父さんに会社を任せて母と暮らしていたけど、僕が生まれた頃に事故で早死にしてしまった。
叔父はあいつは俺の方が会社に相応しいとか言ってお前の母さんと家出したやつだけど、なんとなく自分の命運を知ってた様な気がするよ。
お前が実家の会社に入ってくれるのは嬉しいが甘やかさないぞ。
それがあいつへのお礼だ。
そんな事を言っていたけれど自分もしっかり鍛えてもらいたい。
大学で知り合った彼女もいたけれど仕事を覚えなければいけない。
彼女のためにもできる男を目指してたら、その間に別の男に乗り換えられていた。
かなりナーバスになったけれど、目指すべき先輩もいた。
そんな先輩も僕と同じ目にあっていた。
そして先輩を誘って残業してクリスマスイブ明けの金曜に仕事してたら先輩も出勤してきた。
そんな先輩に昨日のケーキを一緒に食べてくれないかと頼んでしまった。
「そうね。実は今日の晩餐を頼んでた席は二人分だけど一人で食べるのも寂しいからそれに付き合ってくれるなら」
やった!
そしてディナーの店の雰囲気は最高だった。まるでデートみたいだ。
明日が土曜のせいか親子連れも何組かいる。
店のBGMにクリスマスらしく『モミの木』が流れて来た時、ちょっと離れた席の小さな女の子がモミの木の歌を歌い出した。
両親は慌てて止めようとしたけれど、その隣席にいた女性が一緒に高らかに歌い出した。
上手い!あれ歌手の神崎美玲じゃないか。
神崎さんは歌いながらウィンクして周りにさっと手を振った。
思わずその周りの人たちは一緒に歌い出した。もちろん、僕と先輩も。
さすがプロだ。観客の呼吸を知っている。
そして合唱が終わると小さな女の子に拍手。それは会場に広がった。
彼女は機転を利かせてくれたんだ。
店のみんなはニコニコとみんな幸せそうに笑っていた。
そして先輩も。
そのキラキラした笑顔を見ていて僕は思わず「せ、先輩僕と……」
モミの木の花言葉は誠実だ。今、自分の気持ちを伝えよう。
花言葉の杜 菜月 夕 @kaicho_oba
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます