第2話ヒイラギ
気がつくと先輩を目で追っている自分には気がついていた。
女性にもかかわらずみんなを引っ張って企画を通してくれたり、それでいて僕たち部下への面倒見も良い。
さっぱりしていてかっこいい!
そんな彼女も彼氏を見るときの眼は女の子だ。そのギャップも良い。
でも僕はその場面に出くわしてしまった。
「僕はほんとの恋を見つけたんだ」
アホかっ!お前は思春期の青少年かっ!
確かその彼女ってのは先輩の悪口を流していたようなやつだ。
大方、あのアホ彼氏を横取りしたかったのだろう。
あ、やばい。先輩に日頃のお礼と思って先輩のイメージにぴったりのクリスマスローズを贈ったんだった。アレの花言葉には中傷もあった。
先輩は流石に落ち込んでいる。こんな時に元気付けられる何かが。
そう言えば似たような事があった。
僕が入社したてで仕事を覚えるのに必死で彼女に中々かまえなかった結果、ふられたんだった。
落ち込んでた俺を無理矢理仕事に引っ張って、おかげで落ち込んでる暇も無いし、仕事終わりには飲み屋に引っ張られて気がついたら失恋のことなんて忘れてしまっていた。
先輩って意外と脳筋のとこもあるんだよ。
そこもいいんだけどな。惚れた弱味かな。
僕は先輩に電話をかけた。「先輩、助けてください-」
少し遅くなってやっと仕事を片付けて飲み屋に誘った先輩はなにか気づいたようだけど、黙って付き合ってくれた。
それでも先輩は少しいつもより酔っているようだ。やはり今回の事が響いてる。
先輩に告白するチャンスにもみえるけど、つけ込むような事もしたくないし同情におもわれたくもない。
明日のクリスマスにもう一度誘ってみよう。
イブは静かに終わらせるべきだ。
先輩は帰ろうとして外が雪なのに気づいた。
ホワイトクリスマスは良いけれど、濡れてしまいそうな雪だ。
「先輩、これ使ってください」僕は鞄の隅にいつも入れている傘を先輩に渡して近くの駅に走り出す。これでまた会う理由も完璧だ。
自宅最寄りの駅で降りてコンビニに寄るとクリスマスケーキの売れ残りが値下げで残っていた。
僕も先輩も捨てられた売れ残りのケーキのようだな。
今夜はもう食べれないけれど、明日食べようと購入した。
来年は二人で食べれると良いな。
翌日の25日も仕事だった。
先輩はクリスマスデートの有休を勝ち取ったので休みだろう。
「あ、木下君。これありがとう」
あれ、先輩は休みを取っていたはず。
僕の不思議そうな顔を察したのか「休み取ってたけど、暇を持て余してたらいけない気がして仕事することにしたのよ」
先輩の笑顔がまぶしい。思わず告白してしまいそうだ。
「ところで、この傘にヒイラギの紋が入ってるけど家紋なの?」
「ええ、ヒイラギは魔除けにもなるって一つは身につけていろと家紋入りを持っていたんです」
「クリスマスにも合いそうな紋ね。そう言えばうちの会社の社章もヒイラギでそんな話しを入社の時に聞いた事があるわね。なにか関係あるのかな?」
先輩、鋭い。実はこの会社は僕の叔父の会社だ。
僕はごまかそうと「せ、先輩。きのうついクリスマスケーキを買ってしまったんですが、一人で食べるには大きいんで仕事が終わったら一緒に食べてくれませんか」
僕は勢いで誘ってしまった。
手に持ったヒイラギの家紋入り傘が二人を見守っていた
ヒイラギの花言葉「あなたを守ります」
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