其ノ九 説明

 それから数日後、四ツ井よつい家では先ずは高蔭たかかげとお夏の子、数え二つのお玉を受け入れようと言う事になり、高蔭の父も、高蔭の母良子よしこもおおわらわで準備を進めて居りました。


「ほれお千代! それをそんなとこに置きはったら、お玉ちゃんが怪我をしてしまいます。あんじょうきいつけておくれやす」


 などとてきぱき女中達に指示を与えて居る、年はもう五十路いそじ半ばの良子は、数年前に隠居を決め込んでからは、すっかり気持ちが老け込んでしまっていたのが、お玉を引き取る事に決まってからは急に元気を取り戻し、かつて幼い高蔭兄妹きょうだいを育てて居た若い母親だった十数年に戻ったかの様でした。


 しゅうとめの良子の指示で、近頃はどういう訳だか姑夫婦とは別に、おりくと高蔭は二人きりで食事を取る様になって居りました。その理由も、これからこの四ツ井本家に誰が加わり、どう言う生活となって行くのかも、良子は本家の嫡流ちゃくりゅうの正妻で有るお六には、一切説明はしませんでした。


明日に続く

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