其ノ五 薄様
姫君に急にこの様な事を言われて、私は少し戸惑いながらも、
「はい。私は
とお答えしました。
「では、そこの
そう言って姫君が、少しはにかみながらそっと差し出されましたのは、
私自身は
その時、私は思い出しました。あの火事の日、学問所の講堂にいらっしゃる前、夜も更けて居ると言うのに、どう言う訳だかお二人がご一緒に過ごされて居たご様子、そして何よりその時の、姫君の春庭様をご覧になる目が、愛おしさと信頼に満ちて居る様にお見受けしたことを。
刺す様な名前のない痛みを胸に感じながらも、私はこの様な身分の高いお方の願いをお断り出来る様な立場にも無く、ただ、
「はい。承りました」
と申し上げ、その美しい結び文を、姫君の御手から受け取ったのでした。
来週に続く
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