其ノ十三 半鐘

 私お優と木居宣長もくおりのりなが先生も、火事を知らせる半鐘はんしょうの鳴る音を聞いて屋外おくがいに飛び出した所、大名火消だいみょうびけしから要請が有り、医者として怪我人の救護に当たる事になって、学問所の講堂に駆け付けました。


 講堂には、出火元しゅっかもと丸御殿まるごてんから飛び火して焼け移った民家からの怪我人や、煙を吸って具合が悪くなった人々が、数十人所狭ところせましと集まって居りました。


 早速、私と先生も怪我人の救護をして居た所、春庭様がお背中に、そでこそ焦げては居ても、一目でそれが高価な物と分かる上品な絹の単衣ひとえを身にまとった、町中まちなかではまず見かけない、色白の美しい貴人を負ぶって講堂に入っていらっしゃるのが目に入りました。



明日に続く

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