其ノ九 仔猫
その植え込みの根元に居たのは、痩せて骨と皮しかないような体が、濡れて寒さに震え、
「親猫とはぐれてしまったのかな? 可哀想に。これは放って置いたら明日まで生きられるかどうか……」
春庭様はそう仰ると、一旦
「すまない、この子が濡れてしまうと行けないから、ちょっとだけ傘に入れさせて貰うね」
と仰ると、私が差して居る
恋仲でも無い男女が同じ傘に入るなど、聞いた事も有りませんでしたので、私は戸惑って、思わず顔が熱くなるのを止める事が出来ませんでした。
ただ、仔猫の身も案じられましたので、そのまま半町ほど歩いて
来週に続く
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