其ノ三 神社

 雨脚あまあしはまだそれほど強くはありませんでしたが、私は先生に渡して頂いた唐傘からかさを差して春庭様を探しに外へ出ました。


 学問所や親しいご友人の家を何軒か訪ねて回りましたが、春庭様は見つからず、もしやと思い、この城下の鎮守様ちんじゅさまである五四百いよほの森に立ち寄って見る事に致しました。


 急いで春庭様を探さなければ、お客人がお帰りになってしまうと思い、鳥居とりいをくぐり、転びそうになりながら神社の長い石段を駆け登って行くと、樹齢七百年とも言われる荘厳なけやきのご神木しんぼくが大きく枝を垂れて居り、雨の夕闇の中、いつにも増して神々しい様な気が致します。


 その時、人気ひとけの無い神社の拝殿はいでんの影から、何やら物を打ち付けるような音と、人の掛け声のようなものが聞こえて参りました。



明日に続く

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