其ノ十七 お膳

 それからちょうど一年程経った有る朝、山野村やまのむらのそれほどは見事で無いものの、木居もくおり家の有るこの城下町を見下ろす山々には、ちらほらと桃色の山桜が咲く季節となって居りました。


 七ツ半、木居もくおり家の朝は賑やかに始まります。


 私は女中頭じょちゅうがしらに従い、朝餉あさげの配膳をしたり、その日お出かけになる御家族の昼餉ひるげにお持たせする握り飯作りなど、慌ただしく立ち働いて居りました。


 私はご家族の皆様の居間におぜんをお持ちし、皆様が食べ終わられた頃合いを見計らってお膳をお下げします。


 この日はお膳が空になった後も、先生と春庭はるにわ様は新しくあらわす御本のお話などが尽きぬようで、私は居間にお弁当をお持ちする事に致しました。



明日へ続く

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