人格者
空白
0話
——人格者——
はしがき
私「どうでもいい。もうどうでもいいんだ」
0… 朝が来たらさようなら
私は酒という物はあまり好きではない。どこか懐かしさがあり誠実で清純な汚い嘘に溶けたような酒があるそんな場所が好きなだけなのかもしれない。ガラス越しに見える電車を見ながら私は不意に想った。
本当に欲しい何かはいつだって外回りに回り続けていると。
また私は誰かに求めまた同じことを繰り返し全て壊す。
そんな私の顔を見て君は時間に逆らうようにマドラーで酒を内回りに回し始めた。目で帰りたくないと問いかけるように私の手を握る。寂しがりな君にとっては時間は酷な生き物で外回りに永遠に回り続けている。互いに酔いが回ればふらふらふらふらちにまた恋人ごっこ。外見ばかり小綺麗にしているような空き箱の中でまた君と飲み直し、テーブルの上に置かれた中身のない空き缶のような好きを互いに交わし唇を潤す。そんな私はまるで燃えないゴミのような人格者だ。
1…目まぐるしい
朝か夜かまだ分からないまま目が覚める。呑みすぎたせいなのか胸が焼け灰になるような子供の頃の苦い夢を見た。自分の消えない過去に背を向けるように寝返りをする私の隣には、深夜から秒針が止まってるかのように眠る君が居る。私は君の優しさからも背を向け逃げるのだろうか。きっとそんな私を見た君はいつか呆れ嘲笑うだろう。空き缶だらけのガラステーブルに私は手を伸ばし煙草に火をつけた。自身の寿命を金に溶かし金をタバコや酒に溶かしては苦味のような発言とアルコールを割って飲む。そんな不味い味は口に合うはずもなく煙のように全て吐き出しまた意味もなくいつものように息をする。生産性のない事ばかり創り出すのかと。こんな事を想い考えていると自身の手でかけたはずの憎まれ役である携帯のアラームより少し先に、慌ただしいホテルのフロントからお目覚めの電話が鳴る。2人は昨日よりも少しシワの多い同じ服のまま外に繰り出した。私には朝の光があまりにも眩しく眉間を寄せた。シワの数だけ歳を重ね幸せがどうとか語る人間が世間には居るが今の私にはどうも分からない…目まぐるしい光に慣れてきた頃また近い日に何時会うと口約束し2つの影は離れその場を後にした。
2…年輪
花にも木にも様々な見た目や個性がありやがてはカラカラに枯れ果て朽ちる。一途に水を注いでも枯れ果て終わりが来るのであれば私は愛される人間より一生恋される人間で居たいと誓って生きていた。そんな思想の種を撒き周り、女性と酒に溺れ煙草の煙のように消え歩き続けたある日道端に捨てられていた酒の空き缶を目にする。私は遊び心で蹴り飛ばすと今の中身の無い私のようにゆっくりとコロコロと遠くに転がり回った。子供の頃にしていた缶蹴り遊びとは程遠く感じたのだった。
あとがき
人格者を見て下さったそこのあなたへ。あなたのお名前、聞いてもいいですか?こんな出会い方もありますね。今私に幸せを与えてくれた事は事実です。ありがとう。
また出会える日まで。
これも口約束ですよ。
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます